昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2020/09/12

あの日、秋吉投手は「鈍感力」から一番遠いところにいた

 クローザー、あのポジションに投手が引き付けられるのは何なのか。勝利一歩手前の緊迫した場面で失敗の許されない仕事をする。もし自分が……、とちょっと想像しただけでも足が震えそうになる。

 成功して当然、失敗しようものなら、その試合で築いてきた勝利への階段を全部崩してしまう。勝ち星を消してしまえば、別の投手の生活だって変えかねない。そんなヒリヒリした場面がどうしてそんなに魅力的なんだろう。

「信頼感の喜びかもしれない」

 移籍してすぐにそう話したのは今のクローザー、秋吉亮投手。2018年のオフにスワローズからトレードで入団し、翌年からクローザーに抜擢された。新しいチームで信頼を得られたのがとても嬉しかったという。

秋吉亮

 その秋吉投手はファイターズ2年目の今年、苦しんでいる。9月2日、札幌ドーム。イーグルス相手に8月20日の試合に続き抑えに失敗。あの日、秋吉投手は「鈍感力」から一番遠いところにいた。

 5連打を浴び、その一瞬、一瞬に気持ちが動かされていた。揺さぶられていた。いつもは打たれても「最後に勝てばいいんだろ?」とでも聞こえてきそうな強気の表情なのに、あの日はそれが最初からなかった。前回の失敗と同じ相手だということは少なからず関係していたのかもしれない。気持ちも指先に影響する繊細な仕事だ、クローザーとはなんてタフな仕事なんだろうと毎試合思う。

 降板後、ベンチでの落胆の姿は見ているのがつらかった。でも彼はうなだれつつも前を向き、自分が壊した試合を見つめた。

 翌日抹消。

「秋吉らしくなるために一度リフレッシュ、クローザーは秋吉」

 この栗山監督の自分への信頼の言葉は彼のエネルギーになっているはずだ。

 最短で戻ってくればそれは13日となる、仙台のイーグルス戦、リベンジのチャンス。凹まず目の前のことを前向きにとらえ、立ち直りが早い。それが「鈍感」のメリットを生かした「鈍感力」。

 野球ファンは、残り試合が減れば減るほど、少しのミスや采配への疑問を深掘りしてしまう。今は発言する場所もたくさんあるからつい荒い言葉で発散してしまうこともあるかもしれない。応援の感情を抑える必要はない、だけど、しつこく引きずることは絶対にしたくない。流す、赦す、も応援だと私は思う。優れた「鈍感力」を身に付けたい。

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム ペナントレース2020」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/39909 でHITボタンを押してください。

この記事の写真(1枚)

HIT!

この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春野球をフォロー