この球団はファンのものでもあるのですと宣言するような取り組み
甲子園の事例では毎年春先に甲子園歴史館の入場券とともにお礼の手紙が購入者に届いていたそうで、刻印レンガは近隣に住むファンだけでなく遠隔地のファンの心をも「野球ファンとしての故郷」につなぎとめてくれる存在となっていました。帰省や墓参りのように「まだある」とそれを確認する作業は、自分の心をそれを買った2010年に引き戻し、改めてファンとしての情熱を甦らせるものとなってきたことでしょう。
西武球団からは何も約束されてはいませんが、毎年春先に「グリーンフォレスト デリ&カフェ」の無料券か、「ライオンズ チームストア 獅子ビル」でのクレーンゲーム無料券が購入者のもとに届くのではないか……そんな未来を思ってこれからの10年が楽しみになります。10年間の操を立てた、互いに契りを交わした、そんな気持ちにさせられます。病めるときも健やかなるときも、心はそこにあるのだと。
思えば「西武ライオンズ」という球団は長らく堤義明氏の所有物であり、2004年の有価証券報告書の虚偽記載などによる堤氏の失脚後は米投資グループ・サーベラスのものでした。サーベラスが西武ホールディングスの全株式を売却したのが2017年8月10日。来春完了する球場改修計画が発表されたのは2017年11月。そこから現在までの約3年間は、ほんのわずかな「攻めの好機」を逃さずに前進をつづけてきたという意味で、実り多く素晴らしい時間でした。2度の優勝も素晴らしかったけれど、それ以上に大きな前進のある3年弱の時間でした。
その総仕上げとして、聖地にファンの名が刻まれる。まさにそれは本当の意味でこの球団がファンと共に存在するものなのだ、この球団はファンのものでもあるのですと宣言するような取り組みです。自分もその1個に名を刻み、これから10年間その契りを守っていくのだと思うと、この先の10年が今よりさらに素晴らしいものになると思えてきます。ファンと共に繁栄するライオンズ、その道のりを想像して。
まずはその景気づけとして楽天を上回り、地団駄を踏ませたい。1万個のレンガを敷いた西武ファンの魂が宿る地団駄用スペースを、来春までには用意しておきます。僕のレンガを探して存分にお踏みいただきたい。そのためにも、優勝や日本一は正直諦めてはいますが、1試合たりともチカラを抜くことなく最後まで戦い抜いていきたいもの。優勝を諦めたからと言って、シーズンを投げるつもりは毛頭ないのです。
明るい未来のために、頑張れファンと共に進む埼玉西武ライオンズ!
埼玉西武ライオンズの戦いはまだ始まったばかりです!
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