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おおらかなラテン系、オーランド・ロマンの「夢」

 先に名前を挙げたロマンも、かの石川雅規に「今まで一緒にプレーした外国人の中で一番性格が良い」と言わしめたほどのナイスガイだった。プエルトリコ出身の彼は、おおらかな気質のラテン系。その一方で、ピッチャーとしてどんな役割を与えられても、文句も言わず献身的に投げた。

 来日1年目の2012年は、2試合連続完封を含む3試合連続完投勝利を記録するなど、先発として9勝をマーク。2014年には一時、抑えに回って3連投ですべてセーブを挙げたこともある。チームがリーグ優勝した2015年もセットアッパーとして「勝利の方程式」の一角を担っただけでなく、先発としても3試合に投げている。

「先発するなら、本当はその前にファームで調整したいところだけどね……」

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 救援登板から中4日での先発を前にしてそうこぼしたこともあるが、それを表に出すことなく黙ってマウンドに上がった。

 残念ながらロマンは優勝した2015年限りでヤクルトを自由契約になったが、「40歳までは現役を続けたい」と、その後も台湾や故郷プエルトリコのウインターリーグでプレーした。2019年11月にはプエルトリコ代表としてプレミア12に出場し、ウインターリーグでの登板を最後に41歳で引退。今も「チャンスがあればヤクルトで外国人スカウトの仕事がしたい」という。

オーランド・ロマン ©文藝春秋

スコット・マクガフが最も嫌がるのは「先発投手の勝ちを消すこと」

 この「ナイスガイの系譜」を継ぐ選手が、2019年からヤクルトでプレーしている米国ペンシルバニア州出身の救援投手、スコット・マクガフだ。彼も初対面の時の「いいヤツ」という印象が、まったく変わることがない。実にフレンドリーであり、謙虚さも持ち合わせている。

 変化を恐れない選手でもあり、これはほとんど知られていないと思うのだが、来日1年目の途中で「スプリットだとストレートとの球速差があまりないから、打者のタイミングを外せなくなってきた」と、フォークに切り替えた。

 握りを深くしてややスピードを落とし、変化はより大きく。昨シーズン最後の登板となった11月6日の中日戦(ナゴヤドーム)で、最後にモイセ・シエラから空振り三振を奪った球が、まさにそのフォークボールだった。

 この試合でマクガフは1イニングを無失点に抑えて勝利投手になっているが、彼が最も嫌うのが「先発投手の勝ちを消すこと」。救援に失敗した後で、味方が再びリードを奪って自身に勝ちが付いた時などは、「勝ったんだからいいじゃないか」と水を向けても「個人的には喜べない」と表情も冴えない。

 だから、昨年はなかなか調子の上がらなかったマクガフがツイッターなどで「勝ち星泥棒」と揶揄されているのを見ると、心が痛んだ。それでも終わってみればチーム2位の50試合に登板し、一時は8点近くまで跳ね上がっていた防御率も3点台に収めた。新たに2年契約での残留が決まり、今シーズンもヤクルトのユニフォームでプレーする彼の姿を見ることができるのは、個人的にもとても喜ばしいことである。

「あそこまで気遣いのできる外国人はいない」中村悠平も感心する男

 そのマクガフを「ナイスガイは何人もいましたけど、あそこまで気遣いができる外国人(選手)は初めて」と評したのは捕手の中村悠平だが、彼の言葉にもあるように、私見で選んだこの3人以外にも歴代のヤクルトの“助っ人”にはナイスガイが何人もいる。話す機会こそ多くなかったものの、2011年までプレーしたアーロン・ガイエルは人格者だったし、一昨年まで在籍していたデービッド・ブキャナンも間違いなくその部類に入る。挙げ出せばキリがない。

 ただし、昨シーズン入団した新外国人とはコロナ禍ゆえ、ほとんど会話をすることができないままだった。今年は新たに投手でサイスニード、野手ではホセ・オスナとドミンゴ・サンタナの入団が決まっているが、彼らと自由に言葉を交わせるようになるのは、いつのことだろう。そもそも入国制限のため、彼らはキャンプが始まった今も来日できずにいる。

 筆者も今年は今のところ対面取材は控えるようにしており、自主トレにもキャンプにも足を運んでいない。とりあえずは新型コロナウイルスの感染拡大が1日も早く収束に向かい、無事にシーズン開幕を迎えられるよう願うばかりだ。それまでは、また夢の中でぶら下がり取材でもすることにしよう……。

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