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不可能を可能にするのが、主人公だから

「いいときはめっちゃいい、悪いときはこの上なく悪い」。高1野球部の長男は、濱口投手をこんな風に言う。「いいときはめっちゃいい」と「悪いときはこの上なく悪い」の間には、普通なら「でも」が入る。だけどハマちゃんに限っては、その接続詞はどうにもしっくりこない。「いい」の裏側に「悪い」があるんじゃない。両A面のように、ハマちゃんの「いい」と「悪い」は、常に同じ重さと温度を持ってこちらに迫ってくる。

 自由は、不自由といつもセットだ。野球選手にしては小柄な体型、強く腕を振ることにこだわるあまりの制球難、感情豊かな表情はポーカーフェイスとは程遠く、不甲斐ない投球にベンチで涙し、時に不貞腐れ、それをスタッフに諭されることもあった。たくさんの不自由の中で、ハマちゃんは自分の中の暴れ馬を乗りこなし、ここまできた。「もしハマちゃんが同じチームにいたら、めっちゃおもしろい。だって飽きないじゃん」と長男は言う。そうだね、飽きないね。ハマちゃんの前では、データとか予想とか知見とか一瞬で絵に描いたモチとなる。「初めて野球やりました!」の顔して、とんでもない好投を見せたかと思えば突然崩れたりして、こっちまで「初めて野球を見ました!」の気持ちにさせる。小さくまとまるな、と言われている気持ちになる。

 プロ野球人生をその「制球力」一つにかけた三浦大輔は、初めて采配を振るうその日を、濱口遥大に託した。開幕投手「やりたいやりたい~」とせがんだ濱口投手を、やれやれという感じで受け止めた番長。報道からはそんなシーンを勝手に想像したけど、でもそこに感じてしまう。新監督としての番長の覚悟と、ハマちゃんのそこはかとない優しさ。番長はハマちゃんの自由に賭け、ハマちゃんは誰もが厳しいと予想する番長の船出を自ら背負った。いや、考えすぎか。でも主人公だからな、ハマちゃんは。不可能を可能にするのが、主人公だから。

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 ほんとにワクワクしてる。このワクワクは、今年のベイスターズだからこそ味わえる特別なワクワク。春はやっと3月26日を連れてきた。ハマちゃんの放ったチェンジアップが、灰色だった世界に色をつける日。そのDeNAは驀地。混沌と秩序、緊張と快感、三振と四球、相反する二つを結んで。ハマちゃんが、私たちを、ベイスターズを、自由へ道連れ。

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