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投打のヒーローとして試合後のマイクを握る金子弌大の姿も見てみたかった

 これ、消えてほしくない!

 降雨ノーゲームは珍しいことではありません。リードしていたら惜しくなりますが、ビハインドだったのでちょっとホッとする場合だってある訳で、ならして見れば収支はトントンでありましょう。やり直しの試合で、また取り返せばいいんです。

 でも。試合そのものはやり直せますが、中止になった試合で起こっていたヒットも好投もファインプレーも、よみがえらせることはできません。最初から存在しなかったことになっておしまいです。

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 野手はヒットも打点もまた次の試合で稼げばいいのですが、金子弌大の場合そうはいきません。交流戦のビジターゲームに登板してチャンスで代打を送られずにそのまま打席に入って打つ、そんな機会、この先ずっとプレーを続けたとしてもはたしてまた巡ってくるものかどうか。ましてやそこで本当に結果を出すなんてことが。

 千載一遇。一期一会。ここで会ったが百年目(だんだん変になってきた)。野球の神様への願い事は、この打席が記録に残ってほしいというただその一事のみになっておりました。極端なことを言えばもうリードを保てるかどうかは二の次で、ここから逆転負けでもそれはいいのです。いやそれはもちろんこのまま勝てば投打のヒーローをひとりで兼任で、それに越したことはないんですけれども……。

 4回表、再びの中断。そして、そのまま試合中止となったのでした。

 試合後の金子弌大は《「結果的に幻になったが、打ったのは事実なので」と笑顔を見せた。》(サンケイスポーツ)とのことです。うん。記録は残りません。でも彼は確かに打ったし、ファンはそれを確かに観ました。気の早い話ですがシーズン終了後に2021年のファイターズを振り返る時、きっとこのことも挙がるでしょう。これからずっと交流戦の時期になるたびに思い出して語られるかもしれません。

 この3日の試合が流れたので、16日に伊藤大海が交流戦の最後を締めくくることになりました。終わり良ければすべて良しと思いつつ、投打のヒーローとして試合後のマイクを握る金子弌大の姿も見てみたかったなと、やっぱり少し思ったんです。少しだけはね。

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