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「来年、プロで待ってるよ」

 時は経ち、「一緒に見返そう」と見据えてきた20年のドラフト会議を迎えた。栗林は広島にドラフト1位で指名された。しかし、逢澤と同時のプロ入りはかなわなかった。入社直後、逢澤の一言に救われてから2年。今度は、栗林から逢澤に思いを伝えた。

「来年、プロで待ってるよ」

 栗林は一足先にたどり着いた夢の舞台で快進撃を続けている。新人ながら抑えを任されると、開幕から22試合連続無失点とドラフト制以降の新人最長記録を更新した。14年のDeNA三上朋也以来2人目となる無敗での2桁セーブ到達も達成。34試合に登板して0勝1敗、18セーブ、防御率0.53と圧巻の成績を残して前半戦を終えた。

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 2人は、いまも連絡を取り合っている。広島で栗林の活躍を記念したTシャツが発売されたときには、「Tシャツ買ったよ」と逢澤から連絡が入ったと言う。逢澤は、休日の恒例だった直接対決がなくなっても黙々とバットを振り続け、一方の栗林も相方への感謝が色あせることはない。

「指名漏れを経験した選手と一緒に頑張ってこられたことが自分の心の支えになった。そして、もう一度プロ野球選手になる夢を追いかけることができた。仲間に恵まれました」

 栗林の活躍は侍ジャパンの首脳陣の目に留まり、東京五輪の代表選手に選出された。逢澤らトヨタ自動車ナインは、栗林とOBである源田に向けて、「侍ジャパンの一員として野球で日本を盛り上げて下さい。トヨタのみんなで応援しています。頑張れ!」とSNSを通じてエールを送った。きっと本人まで届いたことだろう。出会いに恵まれ、仲間と切磋琢磨してきた栗林の道のりは、東京五輪のマウンドへとつながっていた。

河合洋介(スポーツニッポン)

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