日本人初。3つの主要大会で本塁打
ついに上がった「特別な」舞台。オープニングラウンド初戦のドミニカ共和国戦の9回に五輪初安打を記録し、続くメキシコ戦では3ランを含む2安打3打点。山田はこれまで2017年のWBCで2本、2015年と2019年のプレミア12では計3本のアーチを架けていて、五輪と併せ3つの主要国際大会でホームランを打った選手は、日本人では彼が初めてになるという。
打つだけではない。五輪を前に「走る場面が来たら走りたいと思いますし、それは状況判断になると思うので。隙があれば次の塁を狙うっていうのは、オリンピックだけじゃなくてシーズンを通してやってるので、そこはそういう気持ちでいきたいなと思います」と言っていたように、リードオフマンとしてメキシコ戦で2つ、ノックアウトステージ初戦のアメリカ戦でも1つ盗塁を決めている。
すべての得点に絡んだ韓国戦
韓国との準決勝では3回に2017年WBC準決勝のアメリカ戦以来となる送りバントを決めて先制点をお膳立てすると、5回にはツーベースで出塁して2点目のホームイン。さらに冒頭の決勝3点二塁打と、全ての得点に絡んだ。試合後、「もう、とにかくめちゃめちゃ緊張してたんで。本当、いい結果になってガッツポーズしました。よかったです」とホッとしたような笑顔でインタビューに答える山田を見ていたら、これまでのいろいろなことが頭をよぎってきて、また胸が熱くなってしまった……。
「日の丸を背負える選手になりたい」と話していた高校生がプロ野球選手としてそれを実現し、憧れの「五輪の金メダル」を手にするまであと1勝。オリンピックを取材する機会はなく、無観客開催のためスタンドに入ることもできない筆者にとって、できることはテレビの前で祈るぐらいしかない。
山田哲人が金メダルを首にかける姿を見たい
せめて少しでも近いところから念を送れるようにと、決勝戦が行われる8月7日は会場の横浜スタジアムに隣接するホテルを予約している(部屋からスタジアムが見える保証は、今のところない)。そこから山田のみならず、同じヤクルトの村上はもちろん、野手、投手全員に念を送るつもりだ。
侍ジャパンがアメリカとの決勝戦に勝ち、山田哲人が金メダルを首にかける姿を見たら、自分はまた泣いてしまうだろうか。取材ではないので、どうしても気持ちが入ってしまうし、年齢を重ねるごとに涙もろさに磨きがかかっているのも自覚している。でも、どうせなら今度はとびっきりの笑顔を送りたい。たとえ部屋の窓から、ハマスタが見えなかったとしても──。
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