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「弱かった」からこそ、この期間を有効活用できた

 そして後半戦が「カープのターン」になると思うようになった最大の理由。それは佐々岡監督だ。過去のカープを見てもここまで苦しんだ記憶がないというほどの前半戦、佐々岡監督の采配はことあるごとに酷評された。当然それは監督自身の耳にも届いているはずだ。そんな中で始まったエキシビションマッチ。私が「後半戦が始まる前の休憩」という感覚でのんびり見ていたように、佐々岡監督にとっても、原点に立ち返って自身の采配を考える、公式戦の順位に影響がない中で改めて采配を振るう。いい部分、悪い部分を精査する。すべてを見つめ直す期間になったのではないかと思うのだ。

 開幕前に行われるオープン戦は、選手の状態が万全ではなかったり、まだ仕上がってなかったりする部分が多いので、ある種の手探り感がある。しかし今回のエキシビションマッチは、前半戦をフルに戦い、選手たちも完全に仕上がった状態で行われたもの。つまりオープン戦とはまったく条件が異なる。選手が仕上がって正真正銘のシーズンモード、いわば「全開」とも言える中で、不振にあえぐチームを一旦リセットし、後半戦に向け、反省点などを踏まえて戦うことができたというのは、チームにとってプラスでしかない。自分はそう思うのだ。

 たとえばこれが首位のチーム、あるいは上位に食い込んでいるチームなら話は変わってくる。むしろエキシビションマッチによって勢いが止まる、せっかくいい状態なのに、長期間ペナントレースが止まって仕切り直しをするはめになる。そういう意味で考えると、おそらくマイナスの要素の方が多いのではないだろうか。

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 そう。カープは「弱かった」からこそ、この期間を有効活用できたのだ。そしてそれは監督だけではなく、選手も同じだったはず。後半戦が始まる前に様々なことを試せたはずだ。そこに誠也、菊池、森下、栗林。オリンピックの舞台で貴重な経験をし、金メダルという大きなお土産を持って帰ってきた選手が合流し、待望の後半戦が始まる。これをカープのターンの始まりと言わずして、なんと言うのか。

 いま、私は希望に満ち溢れている。2016年、日本シリーズ第6戦、8回表、満塁。そこから飛び出したレアードの勝ち越し満塁ホームラン。現地で観戦していた私は、内野指定席からその弾道を見た。広島の夜空に描かれた放物線はカープファンの希望を打ち砕いた。あの屈辱から足掛け6年。カープのターンがやって来た。行きましょう、クライマックス。勝ち抜いて掴みましょう、日本一。そこのけそこのけカープが通る。カープのターンの始まりだ。

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