初代王者 火の国サラマンダーズ・細川亨監督
そして、この9月11日に大分県・佐伯中央病院スタジアムでは、熊本に本拠地を置く火の国サラマンダーズが2021年シーズンの優勝を果たした。こちらは今年始動したばかりの「ヤマエ久野 九州アジアリーグ」。つまり、火の国は初代王者となったのだ。
火の国を率いるのは細川亨監督だ。西武、ソフトバンク、楽天、ロッテのパ・リーグ4球団でプレーし昨季限りで引退。熊本で次なる野球人生をスタートさせ、就任1年目で優勝監督となった。
熊本には優勝決定前日に足を運び取材をしてきた。
細川監督に今季を振り返ってチームの成長や変化は、と訊ねると「成長も変化もあり過ぎましたね。監督に就任して最初は、正直、このチームで試合ができるのかと思ったくらいでした」としみじみ。
「変化や成長を感じたのは6月頃だったかな。みんながバテ始めたくらいから、逆にひと皮むけたような感じがしました。練習や試合に慣れてきたのかもしれないけど、動きが変わりました。足の運び一つをとっても。そして、何かそれぞれの選手の個性が出てくるようになった。それが成長につながったのもあると思います」
火の国は特に投手力に優れており、正直これまで見てきた独立リーグの中では頭一つどころか二つも三つも飛び抜けた投手能力と層の厚さを見せている。もう1か月を切ったドラフト会議でも上位候補と目される石森大誠投手は最速155キロを投げる左腕。他にも150キロ超を投げる投手が西島篤投手、宮澤怜士投手、橋詰循投手ら複数揃っている。個人的には20歳ながら制球力があり完成度が高く、阪神の西勇輝タイプの源隆馬投手も注目している一人だ。
その投手陣を束ねているのが馬原孝浩ピッチングGM。「コーチ」ではなくピッチングGMなのは、技術指導だけではなく体のケアやトレーニング指導など幅広く行うため。柔道整復師と鍼灸師の国家資格を持つ馬原氏が自身のメソッドを彼らに注ぎ込んできた。
「アマチュアにありがちな部活感を排除しました。例えば疲れがたまってきた時、アマチュアは『体力が足りない』とさらにトレーニングで体を追い込もうとする。そうじゃなくてケアが大事だし、積極的休養をとる考え方も持たないといけません」
馬原氏独特のメソッドで、石森投手は優れた可動域を手に入れたという。12球団見渡しても、ここまで見識の深い指導者はなかなか見当たらない。野球界全体にとって貴重な人材だ。
初優勝 オセアン滋賀ブラックス・柳川洋平監督
そして最後に、「ルートインBCリーグ」の西地区で、この9月11日にオセアン滋賀ブラックスが初優勝を果たした。柳川洋平監督、35歳。2009年から4年間ホークスで投手としてプレーした。育成ドラフト3位入団だったが、3年目にファルケンボーグの穴を埋めるべく支配下登録されて一軍で8試合に登板した。引退後は横浜で少年野球の指導に携わっていたが、今シーズンより滋賀の監督に就任していた。
ところで、「ルートインBCリーグ」は今季、12球団3地区編成で運営されていたが、9月1日に来季は8球団でリーグ戦を行うことが発表された。滋賀を含む同じ西地区の富山、石川、福井の4球団は新たなリーグを発足し、運営していくことも明らかになっており、早ければ16日にも詳細が発表される運びとなっている。
先述したが、独立リーグは「プロ野球」だ。ただ、正直認知度はまだかなり低い。確かにNPBとは予算規模が違い過ぎて「差」を論じるのも馬鹿馬鹿しいくらいだ。ただ、独立リーグ関係者の中には「独立リーグという名称自体が、どこかネガティブな印象を与えているのではないか」との声もある。
いっそブランディング化を目指して、思い切って名称変更するのも手だ。新興勢力であるのは事実なので、たとえば「Neoプロ野球」とか。略称「ネオプロ」。野球ファンのあいだで、そんな議論を巻き起こしてみるのもまた楽しいのではなかろうか。
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