プロの世界に送り出した恩師とプロの世界にいざなったスカウトを驚かせているのはロッテのルーキー・村山亮介だ。186センチ108キロで高校通算38本塁打を放った大型捕手。ZOZOマリンスタジアムから約2キロの距離にある県立幕張総合高に通っており、ロッテでチームメイトとなる井上晴哉の愛称「アジャ」にちなみ「幕張のアジャ二世」の異名を取る。

 昨年のドラフト会議でロッテから育成4位指名。この指名でロッテは育成ドラフトを切り上げたため、村山はチーム内の「最下位指名選手」にあたる。

 ドラフト最上位指名(1位指名)は同期で同ポジションの松川虎生。甲子園にも出場し華々しくプロ入りした松川と比較すれば、実績や立ち位置は雲泥の差があるが、一心不乱に下克上を目指している。

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村山亮介 ©山口真央

担当スカウトが感動したひたむきに成長を目指す姿

「感動しましたよ。スカウトになって7年目ですが、藤原恭大以来2人目です」

 村山の担当である小林敦スカウトがそう話す出来事があったのは入団発表記者会見の前夜だ。選手たちは翌日に備えてホテルに宿泊するのだが、村山はバットを持ち込み、近くの公園で素振りを始めた。

「特に育成指名なんだから、ここからが勝負だぞ」とは多くの人に言われたであろうことは容易に想像ができるが、初の晴れ舞台を前にしても気を緩めることなく、ひたむきに成長を目指す姿は小林スカウトの心に深く刻まれた。

「すごい元気でした。返事1つから変わっていて、どうしちゃったのかと思うくらいキャラ変していました」

 そう話すのは石垣島キャンプ視察に訪れた幕張総合・柳田大輔監督だ。さらに打撃も日頃の取り組みが分かるものだったという。

「高校のグラウンドにあんまり来てなかったから“もっとやれよ”って思っていたくらいだったので謝りたいです(笑)。あんなに良くなっているということは、見えないところでやっていたんでしょうね」

幕張総合・柳田大輔監督 ©高木遊

 打撃の好調ぶりには理由があった。高校野球のピッチングマシンは、ほとんどが2つないし3つの円盤が回り、球が出てくる「ローター式」だが、これは投げ入れる人間が必要なためプロではあまり使用しない。代わりに、タイミングもより取れて実戦的なアーム式のマシンを使うのだが、高卒の選手は慣れていないためキャンプで苦労することが多いという。そこで村山は小林スカウトのその助言を受け、柳田監督の紹介によって、同式のピッチングマシンがある京葉ボーイズの室内練習場で打ち込んできたのだという。

 練習場所を提供した勝本俊朗オーナー兼球団代表は「すごく真面目で誠実に取り組む姿勢は中学生にとっても良いお手本でした」と振り返る。