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 しかし、5回1死一塁の第2打席では、佐々木朗が意地を見せた。直前に中村晃がヒットで出塁。数少ない走者を置いた場面でリチャードへ期待がかかるところだったが、初球の内角159キロ直球でバットを完全に折られてボテボテのファーストゴロに倒れた。

「欲が出ちゃったっす。で、ランナーがいることを忘れてて、クイックに対応できずに完全にタイミングが遅れてしまって」

 そんなことあるのと耳を疑ったが、実際あるのがリチャードなのだ。

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「今、自分のバットが手元に無いんですよ」

 そして、もう1つちょっと驚く話題を、リチャードが語り出した。

「バット折れちゃったっすけど、じつはここ最近はバットを折り過ぎて、今、自分のバットが手元に無いんですよ。メーカーの人からは12日くらいまで用意できないって言われて。で、昨日(4日)の試合が終わったときに松田(宣浩)さんがロッカーで『おまえバット無いんちゃうん!?』ってデカい声で言ったんでみんなが気づいて。それで『そうなんです。バット無いんですよ』って言ったら、みんながバットを僕に寄付してくれたんです。一気に7〜8本増えました」

 今宮健太に栗原陵矢、グラシアルに谷川原健太、後輩の井上朋也まで「どうぞ」と自らの商売道具を差し出してきた。

 佐々木朗から打った打席ではグラシアルのバットを使用していた。そして、次の打席でそのバットを折った。

 一般的にというか、大体どんな選手も「バットにはこだわっています」と話す。重さや形、硬さなど千差万別だからだ。

 他人のバットで161キロを打ってしまうリチャードは、やはり規格外な男だ。決して悪い意味ではない。他の選手が真似できない魅力がたっぷり詰まっている。

 佐々木朗希という剛腕と、リチャードという怪物。

 今はまだ「ホープ」と呼ばれる立場だが、今季の活躍次第では一気に球界の顔となっても不思議でない才能の持ち主だ。

 2人の対決が「令和の名勝負」と呼ばれる日が来るかもしれない。そうなれば、プロ野球の未来はまた明るいものになる。

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