原辰徳監督は迷うことなくC62です
原辰徳監督は、2002~2003年、2006~2015年、2019年から現在まで、その座を2度退いても指揮官として巨人軍を率いています。
14季の川上哲治さんを超え、昨年15季の長嶋茂雄さんと並びました。16年目となる今年は、巨人軍歴代監督として最長になります。
監督としての通算勝利数も、歴代11位の1152勝。10位で通算1181勝の星野仙一さんを今シーズン中に超えることは間違いなく、今や球史に残る「名監督」になりました。その原監督を蒸気機関車にたとえるなら、迷うことなくC62です。
C62は戦後の1950年に復活した特急『つばめ』、特急『はと』の先頭となり、日本の大動脈、東海道本線の東京-大阪間を疾走しました。
東海道本線が電化された後も、山陽本線や常磐線でブルートレインを牽引。最後の活躍の地は北海道でしたが、常に鉄道ファンを魅了し続けてきました。長年にわたり巨人軍を牽引してきた原監督は、日本最大の旅客専用機、C62と重なるのです。
貴婦人、大型貨物、3気筒……令和の巨人を支えるスターたち
坂本勇人選手を蒸気機関車で言えば、洗練された形状で人気のあったC57でしょう。愛称は『貴婦人』。細いボイラーが女性をイメージさせるためにそう呼ばれましたが、決して弱々しくはありませんでした。四国を除く日本各地で活躍したC57の姿が、坂本選手とだぶりました。1975年12月14日に、北海道で国鉄最後の営業旅客列車の先頭機になったC57 135号機は、さいたま市の鉄道博物館に保存されています。
若き4番打者、岡本和真選手は大型貨物専用機D52でしょう。25歳にして堂々と巨人軍の屋台骨となり、チームを引っ張っています。お世辞にもスピードがあるとは言えませんが、重い貨物列車を牽引するD52の重量感が、彼のイメージとマッチします。
今年チームの浮沈を大きく左右するのは、菅野智之投手でしょう。2020年の14勝から、昨年は6勝(7敗)と落ち込んでしまいました。彼の復活なくして巨人軍の優勝はなし。そんな気がします。
その菅野投手を蒸気機関車にたとえると、扱いが難しいと言われた3気筒のC53です。C53は、C51の後を継いで1930年代の中頃から各地で特急列車の牽引機になりました。性能はすこぶるいいのですが、故障も多く、整備も難しかったと聞きます。菅野投手が万全な状態で今シーズンを終えれば、V奪回はぐっと近づきます。おのずとジャイアンツファンの期待も大きくなるはずです。
巨人軍に限らず、プロ野球界には色々なタイプの選手が在籍しています。選手たちは個々に自分のタイプをよく理解して、ゲームに臨んでほしいと願います。それぞれの特性に応じて疾走した蒸気機関車のように……。
今年は最後にリーグ制覇をするのはどのチームでしょうか。私も一人のプロ野球ファンとして、ペナントレースを楽しみたいと思います。
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