みなさん、こんにちは。東京ヤクルトスワローズ広報部の三輪正義です。プロ野球も開幕してはや1か月。チームは一進一退を繰り返し、現在Bクラスながらも5割以上をキープ(4月19日現在)しています。昨年のスワローズもこんな感じでスタートしたので、まったく心配はしていないのですが、とにかく選手にケガが出ないことを祈りつつ、広報としての日々の業務についています。
先日、愛媛・松山「坊っちゃんスタジアム」で行われた広島戦に帯同し、さまざまな仕事をこなしました。
松山は僕自身本当に久しぶり。独立リーグ・香川オリーブガイナーズに所属していたころは頻繁に試合をしていた場所だし、スワローズに入ってからも秋季キャンプ、そして公式戦と大変思い出深い土地です。
現役時代、最後に坊っちゃんスタジアムで試合に出たのはいつだろう? 薄れゆく記憶のなか、思い返してみると、2013年5月11日の阪神戦に代走として途中出場、そのまま三塁の守備に就き1打数0安打1三振という微妙な結果でした。
松山は「第二のホーム」
ヤクルトスワローズにとっても松山は「第二のホーム」。2004年から秋季キャンプを毎年行っており、2005年には古田敦也さんが2000本安打を坊っちゃんスタジアムで達成。
松山市内での権現温泉で、山田哲人、荒木貴裕、川端慎吾など多くの後輩が毎年お世話になっているところです。
せっかくの「第二のホーム」なので、選手たちには「松山の思い出」と題し、球団公式YouTubeのインタビュー撮影に協力してもらったのですが、誰に聞いても「キャンプがキツかった」のみ。食べ物や気候など、違う話題を振るも、「キャンプ……」が口をつきます。2017年、ここでの対中日戦でサヨナラ満塁ホームランを打った荒木ですら、キャンプの話しかしないのです。(この模様は現在球団公式YouTubeで公開中です)
確かに現役時代の秋季キャンプはキツいものでした。とにかくバットを振らされ1日1000スイングは当たり前、特守に次ぐ特守。シーズン後に疲弊した体をとことんいじめ抜いたことを昨日のように覚えています。
6000人の大ホールを満員にすると意気込むつば九郎
YouTubeの他には、トークショー「つば九郎のお悩み相談ライブ」の司会進行も務めました。球場横に愛媛県武道館というホールがあり、その大会議室に108人を集めての2DAYS。聞けばチケットが、3分で売り切れたという超人気イベント。愛媛県内はもとより全国からお客様が集まってくれ、大変盛況でした。
つば九郎はこれで調子に乗ったらしく、来年は6000人を収容する大ホールを満員にできる、と豪語します。ここはB’zやDREAMS COME TRUEなど錚々たるアーティストがコンサートを行っている場所。「かたならべます」とつば九郎は言いますが、僕には6000人を前にトークを回す自信は今のところありません。
イベント参加者には試合前の練習見学のおまけつき。僕がお客様をグラウンド内へ引率します。トラメガ(拡声器)を使って「ただいま嶋基宏選手がティーバッティング練習をしております。ナイスバッティン嶋選手!」などと煽ります。「こっちは練習してんだよ!」と嶋は一瞬迷惑そうな顔をしますが、「ファンの方、来られてますよ」とトラメガで言うと、はにかみながら挨拶。ファンの方の拍手に喜色満面です。この様子を見ていた松元ユウイチコーチからは、「あれ良かったね。雰囲気良くなったし、ありがとう」と後日お礼を言われたのはここだけの話です。
独立リーグ時代、サインを求めに来たある少年
さて、四国といえばもう一つ大切な思い出があります。それは僕が独立リーグ時代、試合が終わると、ある小学生が僕にサインを求めてきました。実際には何枚もサインを書いたので、顔は覚えていないのですが、12年後、その小学生は、ずいぶん大きくなり僕の前に現れました。
香川県丸亀市出身、2017年ドラフト7位でスワローズに入団した松本直樹です。
松本直樹は生まれて初めてサインを貰ったプロ野球選手が、独立リーグ時代の僕というのです。入団して翌年、2月のキャンプの初対面のとき挨拶はしたのですが、その時はまったくおくびにも出さず、半年後の8月に「実は、三輪さんのサインが……」と衝撃の告白をしたのです。
とっさに、そのサインはまだ家にあるの?と聞くと「あります」と答えました。それまでポジションも違うし、全く接点もなかった選手、でも松本に対する見方が変わりました。僕と同じくドラフト下位指名、社会人出身、そしてサブ的存在。目をかけるなと言っても無理でしょう?
それから約1年後の2019年9月22日、彼はプロ入り初ホームランを放ちました。忘れもしない雨の日。先発マスクも被って勝利に貢献したのですから、当然お立ち台のはずが、その日は僕の引退セレモニー。僕の雨中のラストヘッドスライディングが、松本の「晴れの日」を霞ませてしまったのです。