夏冬の北京五輪2大会でメインスタジアムとして使われた北京国家体育場、通称「鳥の巣」。独特の形状による建築美から、いまだに見る者に新鮮な驚きを与えるあの名スタジアムと肩を並べるスタジアムが日本に誕生いたしました。それが通称ではない「リアル烏の巣」へと進化を遂げた、我らが埼玉西武ライオンズの本拠地ベルーナドームです。

 かねがね豊かな自然を座席に居ながらにして堪能できる自然強制型のスタジアムとして知られてきたベルーナドームですが(※強制される自然の例:花粉、ハチ、蛾、雨、寒暖など)、もはや自然はベルーナドームの内部へと静かに浸食し、球場を飲み込みつつあります。その象徴となるのが今季初頭から目撃談が相次いでいる、ベルーナドーム内天井部に出現した「烏の巣」です。

ベルーナドーム天井部に出現した「烏の巣」とカラス
天井部中央の丸印のあたりに巣が見える
巣は小枝などを組み合わせて作られているようだ

自然界からも認められたベルーナドームの過ごしやすさ。

 現時点では専門家による分析は行なわれていないものの、目撃者の証言を総合するとこの鳥がカラスであることは間違いありません。ベルーナドームでは常日頃から球場内を我が物顔でカラスが飛び回っており、「西武の白星を見る確率よりも球場内でカラスを見る確率のほうが高い」とまで言われています。2013年には試合中にカラスがハトを襲って落下させ、試合中断という事態を引き起こしたこともありました。

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 それでも従来は、壁をつけ渋った屋根と地面の隙間から飛来して、また隙間から去っていくというのが常でした。あくまでもカラスは部外者だったのです。しかし、賢明なカラスは気づいてしまったのでしょう。外よりは中のほうが快適であることに。そして、球場の中に住むほうが合理的であることに。

 近年のベルーナドーム界隈は度重なる球場改修によって飲食店がやたらと充実してきました。球場外周全域に渡って飲食店が立ち並び、もはや円周状フードコートと言っても過言ではありません。今や周辺地域の飲食店の87%がベルーナドーム周辺部に集中するほどになり(※グルメサイト「食べログ」にて西武球場前駅に登録されている飲食店100店舗のうち87店舗が該当/2022年5月10日時点)、あまりの選択肢の多さから球場内フードデリバリーサービスまで開始されたほどです。

ライオンズグルメ座席お届けサービスの案内

 それら飲食店から出る廃棄食材や来場者が出す食べ残しを効率良く手に入れるためには、すべての飲食店から均等距離にあたる球場中央部に拠点を構えるのが合理的です。食べ物をくわえて、山に戻って、また飛んでくるなんてアホらしいですからね。この地域でもっとも暮らしやすい場所はベルーナドームの真ん中である。自然界からもベルーナドームの素晴らしさがいよいよ認められたのである、そのように言えるのではないでしょうか。

食べ残しの捨て場所が分かりづらい分別指示書はカラス向けに早急なアップデートが求められる。なお、食べ残しを捨てるゴミ箱は別にあるので、どちらにも捨ててはいけない