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11歳上の先輩に勇気を持って…広島・中村奨成が會澤翼に見せた成長

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/06/24
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會澤に何とか成長を見せることができた一戦

 初めて1軍練習に参加したのは、3年目の20年春季キャンプだった。キャンプ中の捕手は、ブルペンで投手の球を受けたり、投内連携に入ったりと数カ所に分かれて練習をする。初めて會澤と中村奨が守備練習で同組になった日、會澤がホームベースの前に立つだけでナインに緊張が走るのを感じた。「空気が変わった。凄いな……ってビックリした」。当時は、會澤の背中をより遠くに感じていたことだろう。2軍に戻ると1軍のナイターをテレビでチェックし、會澤の配球をノートに書き込みながら学んだ。

 そして今季から捕手としても出場機会を与えられるようになったことで、ようやく先輩から盗んだ技術を披露するチャンスがやってきた。6月2日の日本ハム戦では今季初めて先発マスクを託された。盗塁を2度阻止し、打っては5回の満塁機で走者一掃の二塁打を放つ大活躍。ただし、勝利まで残り1イニングとなった6―3の9回は任せてもらえずにベンチに下がった。代わりにマスクをかぶったのは會澤。抑えの栗林をリードして三者凡退と難なく試合を片付けた。

 ベンチから試合終了を見届けた中村奨は、勝利のハイタッチの最前列に並んだ。すると、一塁ベンチ前にゆっくりと戻ってきた會澤が中村奨の前で右手をそっと差し出した。中村奨は喜びをかみしめるように両手でガッチリと握手。頭を下げると、「よくやった」とばかりにポンポンと頭をなでられた。尊敬する先輩に何とか成長を見せることができた一戦となった。

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 ドラフト1位で入団してから今季で5年目を迎えた。昨季にプロ初安打、初本塁打を決めて迎えた勝負の年。今年が今後のプロ野球人生を左右するような大切なシーズンになるかもしれない。「外野で結果を残せば、捕手でも出させてもらえるかもしれない。やっぱり一番は試合に出たいです」。試合に出る喜びを改めて実感する刺激的な日々もまた、自らの殻を破る力となる。

河合洋介(スポーツニッポン)

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