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「あぁ、本当にプロ野球選手になったんだな」広島・ 持丸泰輝、夢を叶えた父と息子の物語

文春野球コラム ペナントレース2022

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「息子をプロに入れたいんです」

 小学生のときに野球を始めた息子を、中学、高校、そしてプロへと。ずっと見守り続けてきた父・知己さんだか、実は1つだけ内緒にしていた話があった。

 それは持丸が高校に入るときのこと。

 知己さんは野球部の監督さんに会った際に、「恥ずかしい話かもしれないんですが、息子をプロに入れたいんです。本人も真剣に考えてるんで、どうかよろしくお願いします」と頭を下げた。

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 父も夢だったプロ野球選手に。泰輝ならなれる。そう信じていた。

 この話には続きがある。カープから指名を受け、仮契約の時に旭川のホテルで近藤スカウトと高校の野球部の監督さんと会食があった。その場で突然監督さんから、「お父さん、泰輝が高校に入る前のこと覚えていますか? 僕、ちゃんと約束守りましたよ」と笑顔で言われた。

 周りの人に恵まれているのは、息子・泰輝だけでなく、父・知己さんの人柄もあるからだろう。

「あぁ、泰輝は本当にプロ野球選手になったんだな」そう考えると自然と涙が出てきたという。

高卒入団同期5人組 木下選手と韮澤選手の間に挟まれてご満悦の父・知己さん(知己さん提供)

知己さんがずっと伝えてきた言葉

 持丸泰輝の新しい背番号は「95」。

 カープ芸人として活動している中で、ありがたいことに二軍での取材をさせてもらう機会が多く、持丸のこともずっと見てきた。

 なので、支配下契約は個人的にも嬉しく、ニュースを見た瞬間に本人に“おめでとう”とメッセージを送った。すると「やっとスタート地点に立てました。ここからです」と、喜びを噛み締めながらもしっかりと地に足をつけていた。

 子供の頃にずっと両親から言われてきた言葉が影響しているのだろう。

「自分が成績上がっても勝ち誇ったりしたらダメ、常に平常心だよ」

 知己さんがずっと伝えてきた言葉だ。

 息子同様に父も平常心だった。

「泰輝が支配下になってから沢山のお祝いメールの処理にてんてこまいです。嬉しい限りです。泰輝がこれまで頑張ってこれたのも、沢山の周りの人に支えられ、熱い応援により勝ち取れたものと思っております。やっとプロ野球のスタート地点です。これからが本当の勝負! 何とか正捕手目指し、1軍のステージで活躍する姿を早く見たいですね」

 夢に向かって一直線。まだまだ沢山の目標がある。

『今年は勝負の年。必ず勝って帰ってくる!!』

 支配下契約という家族との約束はしっかりと果たした。次はプロ初ヒットか? プロ初ホームランか? それとも捕手としてチームの勝利か?

 まだ20歳、楽しみしかない。

勝(本人提供)

 持丸は家族に「カープを代表する選手になりたい、日本代表のキャッチャーになりたい」と伝えている。育成選手から日本一に。捕手でいえば福岡ソフトバンクホークスの甲斐拓也が実現させた。

 持丸がカープで正捕手になり、日本シリーズで戦う姿を僕も楽しみにしている。

 そして、また時間ができた際には父と子でゆっくりと祝杯をあげてほしい。またすぐに寝るかもしれないが……(笑)。

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