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セカンド用で重宝する明石健志選手から譲り受けたグローブ

 牧原選手が現在使っているセカンド用のグローブもそのような形状だし、ほかにも現役時代にセカンドの名手として名を馳せた、現在ホークスの一軍内野守備走塁コーチの本多雄一さんが現役のときに使っていたグローブもやはり、平べったく、小さい作りになっていた。

 そして現在、牧原選手がセカンド用で重宝しているグローブは、ベテランの明石健志選手から譲り受けたものだ。新しいグローブを買い漁り、どんなに自分に合った型をつけて捕りやすい型にしたとしても、この明石選手のグローブを越えたものに出合ったことは一度もないと言う。それほど、自分に合ったグローブに仕上げるのは難しいことなのである。

 ちなみに、現役時代の本多選手や、松井稼頭央さんをはじめとする超一流選手が実際に使っていたグローブが見たい方は、福岡市中央区大手門にある「久保田運動具店」に行ってもらえれば、そのグローブを実際に見ることができる。

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 2度目の余談だが、僕は中高6年間に渡って使ったグローブをこの久保田運動具店、通称「久保田スラッガー」で購入し愛用していた。さらに、現役当時の本多選手と遭遇したこともあり、セカンドを守りたいと話したところ、本多選手から直々にグローブを決めていただいたことがあった。あれから6年間セカンドを守り続け、中学でも高校でもレギュラーを取ることができた。本多コーチ、その節は本当にありがとうございました!!!

サードで外野用のグローブを使用する理由

 話を本題に戻すが、続いてはサード用のグローブについて。特徴はセカンド用に比べてポケットが深く、大きさも少しだけ大きいという所である。

 これはなぜかというと、サードは内野の中で一番、速い打球が飛んでくるから。右打者の強烈な打球が飛んでくるサードの場合「当てグロ」では打球の勢いに負けてしまう。ボールを止めて、しっかり手のひらで掴めるような作りになっているのだ。

 ただ、サードを守っているときの牧原選手のグローブなのだが、なんと外野用の縦長のグローブを使用しているのだ。外野用はサードのグローブよりも、さらに少しだけ大きい。その先っぽに打球が引っ掛かってくれれば、1つのアウトをもぎ取ることができる。ほんの数センチの違いかもしれないが、それだけ1つのプレーやアウトに執念を燃やしている証なのだ。ただ、一方で外野用のグローブは大きくて、ポケットが深いので、送球時にボールが取り出しにくくなる。その中で素早くボールを握り替えてダブルプレーをとったりしていると考えると、やはりそこにプロの凄さを感じる。

 牧原選手はグローブを使い分けることで、どのポジションでどんな打球が飛んできてもうまく処理することができている。また、牧原選手の場合は一試合の中でポジションが変わることも珍しくない。その時はもちろんグローブも使い分けている。その対応力も素人目からすれば信じられないほど高い技術なのだ。

 このように、同じように見える「グローブ」であっても、実はポジションや使いやすさ、目的によって特徴が異なることが分かってもらえたと思う。どうしても、野球は「打った・投げた・守った・走った」という結果だけに目が行きがちだが、こういった道具のことを詳しく知ってもらえると、また違った新しい野球の楽しみ方ができると思う。

 また、ホークスにとってここからが一番大切で大変な時期に差しかかっていく。どんな打球でも捕ってみせる、牧原選手のプレー、そしてグローブにこれからも大注目していきたい。

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