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名投手の晩年…金子千尋や宮西尚生の姿が気になる

 乾のように、納得ずくで現役を終えられる選手はどれだけいるのだろう。日本ハムでプロ生活を終えた投手たちのことを思うと、最後は2軍で試行錯誤している姿が思い浮かぶ。武田久投手は2014年からの4年間、古傷もあって1軍での登板機会を減らし、2軍で投げ続けていた。最後は退団して古巣の社会人野球・日本通運に戻り兼任コーチとなった。武田勝投手は2013年の開幕戦で脚を故障してから、数字がガクッと落ちた。最後のシーズンとなった2016年は1年間、鎌ケ谷でローテーションを守った。1軍登板は引退試合のロッテ戦、打者1人だけだった。

 まだ思い浮かぶ顔はいる。木佐貫洋投手は2015年、鎌ケ谷で人知れず変身を目指していた。まっすぐとフォークを武器に三振をとる投手から、ボールを小さく動かして打たせて取る投手へ。「なかなか空振りを取れなくなったので、変わらないといけないと思って」。結果的に現役最後のシーズンになったが、最後までもがいていた。

 そして、現在も1軍にいない投手のことが気になってしまう。

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 金子千尋投手と宮西尚生投手だ。金子は今季、1軍では3試合に先発し1勝2敗という成績にとどまるものの、2軍では7勝。コロナで選手が揃わず、中止が続いた時期もあった中での安定感は特筆ものだ。そして宮西は、入団した2008年から続けてきた50試合登板がついに途切れてしまった。8月、2度目の登録抹消後は1軍にも2軍にも姿が見えなくなった。

 と、思っていたら、宮西は左肘を手術して来季に備えるとの球団発表があった。クリーニング手術で全治3カ月だという。宮西は球団ホームページで「シーズン中にもかかわらず手術することになり、チームに迷惑をかけて申し訳ない気持ちです。また、この年で手術するという決断を尊重してくれた球団に感謝したいです。自分自身この先どうなるか分からないですが、残された野球人生を悔いなく投げられるよう、リハビリを頑張ります」とのコメントを発表している。

 正直な気持ちがあふれているなと思った。「この先どうなるか」という言葉通り、来季がベテランたちにとってどんな1年になるかはわからない。ただ、もうやることがないというところまでやり尽くしてほしいと願う。もがき、工夫を続ける姿を見ている若手もきっといる。チームの歴史はそうしてつむがれていくのだ。

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