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松本の真骨頂が発揮された試合

 松本自身は今の立ち位置についてどのように考えているのか。

 その思いを聞くことが出来た。

「シーズンに入ってからは中継ぎで、チームのために投げようと思いながらやっています。もし、先発で投げていたら、どんなシーズンだったのか分からないですが、今こうしていい場面で投げさせてもらっているのでマイナスなことばかりではなかったと思います。

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 また、いろんな場面で投げましたが、最近はある程度(イニングの)後ろの方になったので準備はしやすくなりました。ただ、今季前半は試合の展開を見ながら準備をしていた分、そのおかげで肩が出来るのが早くなった感じがします。いろんな場面を経験させてもらったことがプラスになっていますし、僕としてはいい緊張感や集中力の中でやらせてもらっています」

 まさに一途で、まっすぐな男。

 そんな松本の真骨頂が発揮されたのが9月2日、西武との首位攻防戦だった。

 先発した東浜巨は無失点ピッチングだったが、1-0で迎えた6回表2死一、二塁で一塁ベース寄りの投ゴロを処理しようとした際に足にアクシデントが発生。結果は内野安打となり、まさかの緊急降板となった。

 続く2死満塁で迎える打者は栗山巧だ。ソフトバンクのリリーフには「左キラー」の嘉弥真新也がいる。松本も「(東浜)巨さんに何かあっても嘉弥真さんかな」と思っていたという。しかし、ブルペンの電話が鳴り、コーチから「マツ、準備しろ」と指示が飛んできた。

 慌ただしくマウンドに上がったが、「逆にそれが良かったかも」と言った。

 一軍登板は8月21日以来、12日ぶりと間隔が空いていた。胃腸炎による体調不良でファーム調整となり、戦列に戻ったばかりだった。

「試合前まで不安だったけど、そんなことを考えられない場面。逆に思いきっていけました」

 栗山に対しては力勝負を挑んだ。152キロストライク、154キロボール、152キロと154キロが連続ファウルで1ボール2ストライクと追い込んだ。勝負球はフォークだ。「良いところに落ちてくれました」と空振り三振を奪う最高の仕事を果たしてみせた。「どうやって投げたか詳しく覚えてない」と振り返るほど、勝負の世界に入り込んでいた。

 この対決がまさに勝負の分かれ目となり、試合は7投手の完封リレーでホークスが4対0と完勝。西武をかわして首位浮上を果たしたのだった。

 ところであの場面。藤本監督はなぜ嘉弥真ではなく松本を起用したのか。

「松本は栗山に対して(昨季)5打数0安打。嘉弥真は(今季)2打数1安打だった。松本のパワーピッチングの方が栗山に対してはいいと思ったから」

 アクシデントによる継投の中でも、藤本監督をはじめとした首脳陣は冷静だった。藤本采配もまたファインプレーだった。

 レギュラーシーズンはいよいよ最終盤。ホークスも残り20試合を切った。

 現在戦っている11連戦が、2年ぶりのリーグ優勝に向けた大きなヤマ場となる。もう一戦必勝の態勢だ。藤本監督も「リミッターを外す」とリリーフの3連投以上も辞さない方針を示している。

 ホークスの切り札である“投のジョーカー”にかかる期待はさらに大きくなるだろう。万能右腕・松本がホークスV奪回の頼もしい使者となる。

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