高卒1年目で堂々デビュー 森木大智がいるという“幸福感”
たくましさを見せつけたのは、高卒3年目の西純矢。今季の初昇格は5月1日のジャイアンツ戦だった。150キロ超えの直球に、上から振り下ろすフォームから繰り出され急降下するフォークで7回1失点8奪三振。鮮烈な投球で「進化」をアピールしたが、「真価」を発揮したのはその後だった。6月に2試合連続で結果を残せず、二軍降格。ここまでは何度も見てきた若手が通る道だ。肝心なのはその後。長引く不振、フォームを崩すなど、そのまま二軍でシーズンを終えてしまうパターンを何度も目にしてきたが、背番号15は違った。酷暑の夏場に二軍で2試合連続完投をマークすると、8月中旬に再昇格し2連勝。上昇曲線を2度描いてローテーションの1枠を勝ち取った。
そんな西純が「本当に堂々と投げていましたし、僕の初登板の時みたいな“青ざめた”感じじゃなかったので(笑)。すごいなと思った」と目を丸くしたのが、物怖じせずデビュー戦を終えた高卒1年目の森木大智。中学時代から「怪物」と称された早熟の豪腕は、一軍初登板となった8月28日のドラゴンズ戦で6回3失点と力投。援護なくプロ初黒星を喫したが、落ち着いたマウンドさばきや直球で真っ向勝負を挑む姿が評価を高めた価値ある“1敗”だった。本人は「(無失点だった)5回までは褒めていい。65点」と何ともリアルで頼もしい自己採点。才木や西純だけでなく“まだ森木もいる”は見る者にこの上ない安心感と幸福感を与える。
手術明けの才木は中10日以上と登板間隔を空けて起用されており、2週間に1度の一軍登板。ベテランの西勇輝が登録抹消されたことも重なり、一時的ながらこの1週間は全6投手が生え抜きの20代以下という、きらめくローテーションが完成した。今季エースへと登り詰めた青柳も7年目で、ベテランのような落ち着きを見せる伊藤将もまだ2年目。多くのファンが諦めきれなかった藤浪の復活だけでなく、彼に続く高卒の本格派右腕たちがそれぞれの道をたどって能力を開花させつつある今。“虎投”の未来はまぶしいほどに明るい。
【虎番13年“チャリコ遠藤”のタイガース豆知識】
2020年11月にトミージョン手術を受け、今季復活を果たした才木投手。実は3歳上の兄・智史さんもトミージョン手術経験者。上武大の野球部出身でタイガースの島田とは同学年でプレー。才木は「兄弟トミージョンはびっくりしました」と苦笑い。
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