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「悔しい結果に終わった投手を一人ぼっちにしない」

 ブルペンから勝つための雰囲気を作り続けたのは山﨑康晃投手。

「もっとできたシーズンだったと思う。でも、去年までの自分より少しだけ周りに安心してもらえているのかな」と相当控え目に振り返っていますが残した結果は、ほぼ完ぺき。クライマックスシリーズも含め8月以降25試合連続無失点で戦い終えました。「夏場の横浜スタジアム17連勝はほとんどが接戦を勝ち切った。皆が自信を持っていいと思う」とチームを称えます。

マウンドの山崎投手 ©tvk

 8月31日、ヒーローインタビューの場では、背骨近くのじん帯が固くなる難病と闘う三嶋一輝投手にエールを送りました。シーズン終盤不調に苦しむエスコバー投手には「悔しい結果に終わった投手を一人ぼっちにしない。自分も周りに助けてもらったから」と必ず声をかけました。

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 プロ2年目の2016年には、初めてポストシーズンを戦い重い雰囲気を感じた経験を踏まえ「僕たち経験者がいつもと変わらず、どっしり構えることで、若い投手達が安心して持ち味を出す雰囲気を作れる」と話し、クライマックスシリーズ2試合では共に9回登板の2イニングでランナーすら許さない圧巻の投球。伊勢大夢投手や入江大生投手が初の大舞台で、ひるむことなく生き生きとした表情を見せた背景には山﨑投手が発揮したコミュニケーション能力と頼もしい背中がありました。

 山﨑投手は、シーズン終了後来シーズンについて球団と話し合っています。

 ベイスターズに残って欲しい思いは強いのですが、もしメジャーリーグへ挑むならば一人のファンとして夢の実現を祈りたいと思います。どの道を選んだとしてもファンと野球そのものに愛される選手に違いありませんから。

第3戦、9回裏の攻撃に声を送る山崎投手 ©tvk

 もう、休む間もなく秋季練習が始まります。すぐに結果を求められる世界にあって、三浦監督が就任してからのベイスターズは近道を選ぶことなく、時間がかかっても、チームが一つになれる雰囲気を作り実らせました。その上で三浦監督は「チームは変わった。でももっと変わらないと目指す頂には届かない」とシーズンを振り返っています。

 石井琢朗野手総合コーチは「今年意識づけたことが、生かされるのは来シーズンから」とし、挑み続けた中で足りなかった要素を洗い出し、次のステップを見据えています。

 1年前とは違う悔しさは原動力。具体的な目標を視界にとらえたチームは強くなれるはず。

 4月にチャンスで打てなかった時「悔しさを味わえるのは現役を続けているからこそ」と気持ちを切り替え、その後勝負を決める一打を重ねてきた藤田選手。今回の無念はその時の比ではなかったはずですが、決意を新たに41歳のシーズンへと、また立ち上がってくれました。

 諦めず前を向くエネルギーに満ちた雰囲気がベイスターズの文化へと育った2022年は、胸を張るべきシーズンだと思っています。

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