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1年半の闘病生活の末に

 頻繁にめまいを覚えるようになってから昨年6月に退院するまで、約1年半にもおよんだ闘病生活。それを献身的に支えたのが、現役引退後に高校野球部の同級生の紹介で知り合ったという夫人である。

「同棲してて、結婚しようかって言ってた時に病気が見つかったんです。それでちょっと先延ばしにして、退院してから入籍したんですけど、だいぶ助けてもらいました。仕事が看護師なので(病気に対する)理解はあったんだと思いますけど、僕1人だったら乗り越えられなかったと思いますね」

 今は仕事にも復帰し、定期的に通院して経過観察を受けている。まだ白血球、赤血球は正常な成人男性の数値に達しておらず、新型コロナウイルスなどの感染症はもちろん「風邪にも気を付けないといけないんです」という。それでも、振り返ってみると必ずしも悪いことばかりではなかった。

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「(担当医が)いい先生で良かったと思います。移植をしない選択肢もあったんですけど、した方が完治率は高くなるっていう説明を受けて、再発を繰り返してまた抗がん剤っていうのは嫌だったので移植を選択したっていう感じですね。50代、60代に多い病気なんですけど、そのぐらいの年齢だと体力的に移植が難しいみたいなんで、いい意味で早期発見で良かったなと思ってます」

再び野球に向き合う日々

 現役引退から遠ざかっていた野球にも、再び携わるようになった。ヤクルト時代の先輩で、現在は女子硬式野球チーム九州ハニーズのバッテリーコーチ兼運営サポートを務める水野祐希の主宰する、野球教室の手伝いを始めたのだ。将来的に指導者の道に進む可能性も視野に入れ、11月には学生野球資格回復制度研修会の受講も予定している。ただし、病気のほうはまだ完治とはいえない。術後から5年経過してがんが再発しなければ、そこで「完治」になるのだという。

「なので今は寛解(かんかい)っていう状態です。50代、60代に多い病気って言ったじゃないですか? 僕ぐらいの年齢でなる人ってほとんどいないみたいで、症例が少ないから、もうサンプルみたいな感じです(笑)。でも原因とかも特にないみたいですし、誰にも起こるけど、自分に起こるとは思ってなかったんですけど……起こりますもんね。ちょっとでもあれ?って思ったらまずはお医者さんに行くのが一番だと思いますし、皆さんにもそうしてほしいですね」

ドラフト同期・中村悠平への思い

 その日高が今、楽しみにしているのは、球団初の2年連続日本一を目指すヤクルトの戦いである。なかでも2008年のドラフト同期の中村悠平には、特別な思いがある。

「去年の日本シリーズももちろん見てましたし、嬉しいしかないです。(ヤクルトの同期入団で)現役はもうムーチョ(中村の愛称)しかいないですしね。もし(自分が)今も選手だったら、あんだけ(中村が)活躍してたら悔しいなと思うんでしょうけど、今は応援しかないですね」

 中村だけではない。入団年は違えどやはり同い年の小川泰弘、ソフトバンクへのトレードを報告した際には涙を流してくれたという大先輩の石川雅規など、かつて苦楽を共にした選手はまだ何人もチームに残っている。

「ヤクルトに期待することですか? やっぱ日本一連覇とムーチョが打ってくれることです。もしヤクルトとソフトバンクの日本シリーズになったら、その時は見に行きたいですね」

ヤクルトvsソフトバンク 古巣同士の日本シリーズを夢見て

 現在行われているCSファイナルステージは、セ・リーグはヤクルトが3勝0敗で王手。パ・リーグもオリックスがソフトバンクを相手に3勝0敗と王手をかけている(いずれも1勝のアドバンテージを含む)が、もしここからソフトバンクがひっくり返して、日本シリーズで古巣同士の対戦が実現したら──。

「やっぱりスワローズを応援しますよ、ホークスが出てきたとしても。こっち(福岡)はホークスファンがめちゃくちゃ多いですけど、僕はやっぱヤクルトですね」

 思いもよらぬ大病を克服し、平穏な日々を取り戻した男は、そう言って笑った。

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