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内川、坂口の後継者

 内川聖一が最後の2打席で放った、左中間への大きな大きなセンターフライとレフト線へのタイムリー二塁打。

 この2球とも全盛期の内川選手なら間違いなくスタンドに運んでいたでしょう。

 10月12日、13日に行われたCSファイナルステージ第1戦、第2戦でホセ・オスナが阪神・西勇輝のシュート、西純矢の内角ストレートを持ち前のパワーでレフトスタンドに放り込んだあの2本のホームランは、【ウチカワ、あとは俺に任せろ】というメッセージにも見えました。

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 シリーズMVPにも輝いた、僕が思うスワローズの歴代最高の一塁手。

 坂口智隆のあの芸術的で天才的な広角打法。

 青木宣親、川端慎吾という稀代のヒットメーカーらとともに切磋琢磨してきたであろうその技術。

 山崎晃大朗、長岡秀樹、宮本丈、丸山和郁、奥村展征、武岡龍世といった左バッターがその技術を少しずつものにしようとしている。

 村上宗隆に至っては、CSファイナルステージ第2戦で藤浪晋太郎の外角低め、154kmの渾身のストレートをレフトスタンドまで運んでしまうようになりました。

 宮本丈が外野守備にも懸命に挑戦していた姿は、かつてファーストに挑戦していた坂口智隆そのものです。

嶋が後継者とチームに遺したもの

 中村悠平の安定感と安心感。

 内山壮真の思いきりのよさ。

 そして、近年のスワローズのベンチの明るさとチームメイトへの気配り、声かけ。

 チーム全員で戦うんだという「フォア・ザ・チーム」の精神。

 これらの【人間力】は嶋基宏が遺してくれたものだと思います。

 コロナ禍で無観客試合が続いたあの日、スワローズベンチから一番聞こえてきたのが嶋基宏の声でした。

 来年からあの声が聞けないのかと思うと、本当に寂しい……。

 もともとスワローズのチームカラーでもある“アットホーム感”。

 昨季、今季はそこに嶋基宏の魂が加えられているんですから、鬼に金棒。

 CS第3戦、2-3で迎えた7回裏の攻撃。

 2死満塁の場面で村上宗隆がボテボテの内野ゴロで見せたファーストへの気迫のヘッドスライディング。

 阪神・浜地投手のエラーも重なり一気に3点を加えて逆転したこのシーン。

 ベンチの全員が泥だらけの村上を見て大爆笑していました。

 そのベンチの様子を見て爆笑する村上。

 その一番前で笑っていたのが青木宣親、川端慎吾、

 そして、コーチとしてベンチに入っている嶋基宏でした。

 さらには8回裏、スワローズ最後の得点を叩き出したのがキャプテン山田哲人のタイムリー。

 全員が立ち上がって盛り上がるベンチ。

 このベンチの雰囲気があるから、スワローズは強いんです。

 その根幹にあるのが髙津監督の【監督力】。

 試合後の監督インタビューでは、

「ムネが素晴らしい当たりを最後ね、打ってくれたんで。持ってる男ですね。ナイスバッティングだったと思います。」

 で爆笑を誘い、

「ムネだけじゃなく、ベンチ一丸となって、チーム一丸となって、お客さんの後押しもあってあのイニング得点することができたと思いますし、ムネの素晴らしいヘッドスライディングでね、、、何度もムネの話してしまいますけども、まあほんとに、全力でやっているその姿そのものだと思います。」

 ときちんと締める。

 この言葉に髙津監督の監督力の全てが詰まっていたように思います。

 そして、去年から恒例となったMVP発表の時の塩見いじり。

 塩見選手、去年よりズカズカ前に進んでたし。

 最後な写真撮影では球団フロント、裏方さんまで一緒に並んでの写真撮影。

 文春コラムでもお馴染みの球団広報、三輪正義さんがマジメに仕事をされている姿も見ることができました。

 さらにその根本には稀代のモチベーター髙津監督の【絶対大丈夫】がある。

 こんな強固なスクラム、並みの人間達では崩せるわけがない。

 崩せるとすれば、牛ぐらいでしょう。

 そう、唯一怖いのは、牛なんです。

 でも、大丈夫。

 内川、坂口、嶋の三神がチームを二連覇に必ず導いてくれる。

 いや、サンシンはゲンが悪い。

 三神改め、三柱(ミハシラ)が最後までチームに力を与えてくれるはずです。

 あとは牛退治(たぶん)。

 さあ、行こう!! 2年連続の頂へ!!!

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