みなさん、こんにちは。東京ヤクルトスワローズ広報部の三輪正義です。
マジックが4(9月23日現在)となり、2年連続のリーグ優勝が目前に迫ってまいりました。このところ僕もかつてないほどの忙しさです。午前中に、僕のライフワークである「投げ方教室」で都内の小学校で授業、午後は球団事務所に帰って、優勝セレモニーなどの準備にてんてこまい。
投げて、喋って、打ち合わせをして、動画企画のディレクション……サラリーマン生活3年目にして、自分史上最高の忙しさを迎えています。これもひとえに髙津臣吾監督を始めとする首脳陣、選手のみんなが必死に戦ったおかげです。僕が目を回すのはほんの一瞬、彼らのがんばりに報いることができて、裏方としてこの上ない喜びなんです。
今年の忙しさは昨年と違う
今年の忙しさ、昨年の優勝時とは違うことがひとつあります。いまやワイドショーやニュースで連日取り上げられている「村神様」。昨年はグッズやイベント、プレスリリースなど「優勝」に集中していればよかったのに、今年はこの「神様」の“ご降臨”で、業務量が“いささか”増えております。
神宮球場は連日満員、そのなかには明らかにヤクルトファンではない「村上宗隆のホームランが見たいんだ!」というお客様も増えています。村上が打席に入るたびに包まれる「ザワザワ」感。「今、打つんじゃないか、打つんじゃないか」という期待感。僕もグラウンドの裏で見ていて、ハラハラドキドキする。こんな感覚は久しぶりです。
9年前、大記録達成に立ち会って感じたこと
思い返せば9年前の2013年シーズン。バレンティンが神宮球場で55号ホームランを打って、王貞治さん、ローズさん、カブレラさんのシーズン記録に並んだ試合。僕もベンチからその光景を目撃しましたが、神宮球場は今よりも異様な雰囲気でした。大竹寛投手(当時広島)から打った打球がライトスタンドに吸い込まれたとき「うわ~、本当に打っちゃったよ……」と思ったのを覚えています。そのあとの打席なんか「アイツ、本当に王さんを超えちゃうの?」と怖いような、嬉しいような複雑な気持ちになりました。
その日は56号は出なかったのですが、4日後の阪神戦。1回裏の第一打席、榎田大樹投手から打った白球が左中間に飛んで56本目のホームラン。日本プロ野球シーズン本塁打記録を達成。王さんの記録は何人もの選手が挑んでは跳ね返されてきた偉大な記録。「俺は歴史の目撃者になった」と感慨深かったですね。
続く3回裏にはイ・スンヨプの記録を破るアジア新記録の57号を連発で達成。その試合の重要さをヒシヒシと感じていたら……魔が差したんです。
大記録達成の裏で「魔が差した」ある事件
ユウイチさんの代走で途中出場した僕は、野球人生でもほとんど経験のない一塁の守備に就きました。9−0でリードした9回表2アウト、最後の打者が放った打球は弱いゴロとなって僕の前に……。ファーストミットいや、外野手用グラブにそのボールを収めて、一塁ベースを踏んだ瞬間、とあることに気づきました。
「あれ? 待てよ、これウイニングボールじゃん……」
バレンティンの記録のボールは本人のもとに戻ってきているし、幸い誰もこのボールの行方を気に留めていない。そう確信した僕はボールをそっとお尻のポケットに忍ばせました。試合後「2013/9/15 バレンティンホームラン新記録の時のウイニングボール」とマジックで書いてこっそり家に持ちかえりました。
今そのボールはというと……わが家の押入れの中の「三輪正義記念館」からこのたび発掘されました!
ボールを見て改めて思うのは、バレンティンの記録達成時はチームは最下位。かたや村上宗隆はチームを牽引し首位に、そして自身は三冠王を摑もうとしている。村上がこのあと何本打つかわかりませんが、個人的には背負うものが多い、村上の記録のほうが価値があるのではないかなぁと思います。
今つくづく感じるのは、同じユニフォームを着た仲間のなかから、再び偉大な本塁打記録を破ろうとする男が出るとは、なんと幸せなんだろうと。