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叫べ、吠えろ、シャウトしろ! ヤクルト・木澤尚文の豪快な荒れ球が今日も僕を魅了する

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/09/12

木澤尚文は面白い

 9月9日、神宮球場で行われた東京ヤクルトスワローズ対広島東洋カープ22回戦。6回裏、得点は4対4、ブルペンでは木澤尚文が投球練習をしていた。同点のままなら、7回表からは木澤にスイッチするのだろう。しかし、もしスワローズがこの回に得点を挙げ、リードをした上で逃げ切り態勢を図るとしたら継投はどうなるのだろう? そんな思いとともに戦況を見つめていた。

 すると、この回のスワローズは長岡秀樹の2ランホームランなどで3点を挙げてカープを突き放すことに成功する。ブルペンでは、そのまま木澤が投げ続けている。間違いなく、彼が三番手としてマウンドに上がるのだろう。勝利の方程式から言えば「8回・清水昇、9回・マクガフ」が登場するとして、問題は7回だった。ベンチには昨年序盤までクローザーを務めていた経験豊富な石山泰稚もいる。今季途中までは7回を託されていた今野龍太も控えている。こうした状況下でマウンドに上がったのは、やはり木澤だった。

木澤尚文

昨年は一軍登板が1試合もなかった男

 ルーキーイヤーとなった昨年は一軍登板が1試合もなかった。二軍でも痛打を浴びるケースが目立ち、2勝8敗、防御率6.07に終わった。秋のフェニックス・リーグでは5回途中15失点という試合もあった。そんな木澤が、ここまで47試合に登板し、優勝を目指す大事な試合のリードした場面で7回を任されるまで急成長を遂げたのだ。

 神宮球場にはサザンオールスターズの『希望の轍』が流れる。実に感慨深い思いで、その光景を眺めつつ、一方では「大丈夫かな……?」とか、「とにかく先頭打者だけは出さないでくれよ……」と、不安な思いも隠せなかった。そして、その不安は現実のものとなる。

 この回の先頭打者、上本崇司への初球はキャッチャーも捕球できない大暴投となった。そして、上本にセンター前に運ばれてしまい、代打・大盛穂にはライト前ヒットを喫する。3点リードがあるとはいえ、ファンとしては気が気でない。続く堂林翔太にもキャッチャーが捕れない大暴投。何とか三振を奪ったものの、一死2、3塁というピンチを作ったまま、ここで木澤は降板した。

 抑えるときには150キロを超えるボールで相手打者を圧倒するけれども、本調子でないときにはフォアボールを連発したり、この日の試合のように信じられない大暴投でヒヤヒヤさせたり、本当に「木澤尚文」という投手はわけがわからない。……でも、だからこそ木澤は面白い。木澤から目が離せない。

知性と品性と野性を兼ね備えた泥臭い慶応ボーイ

 慶応高校から慶応大学に進んだ。経歴だけを見ると、典型的なエリートコースを歩んでいるのは間違いない。入団時には「向井理似のイケメン」と騒がれもした。インタビューの受け答えは如才がなく、会話の端々に知性が垣間見える。Wikipedia情報によると、入寮時には「ドラセナ・コンシンネ」という観葉植物を持ち込んだという。その花言葉は「真実」。……絵に描いたような慶応ボーイであることは間違いない。

 しかし、2年目となった今シーズン。キャンプからオープン戦、開幕に至るまでの彼の言動を見ていると、そんなステレオタイプとは違った一面が見えてくることに俄然興味を持った。神宮球場では彼の登場時に「泥臭く」というフレーズがバックスクリーンに映し出される。それは、僕が勝手に抱いていた彼のイメージとはまるでそぐわないものだった。

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