2022年7月31日。阪神甲子園球場で行われた阪神対ヤクルト16回戦。

 また一つ、スワローズファンにとって忘れる事のできない試合が増えました。

「村上宗隆、プロ初の3打席連続本塁打」

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 今回は、この3本のホームランがいかに凄まじい事なのか、というテーマで書いてみようと思います。

前半戦で借金16を完済した阪神の勢いに飲まれそうだった

 開幕してから9連敗。借金が最大16にまで膨れ上がっていた阪神タイガース。

 早々に優勝戦線から脱落したと思っていたのですが、なんとなんと前半戦で借金を完済。気が付けば9ゲーム差の2位にいるではありませんか。

 チーム防御率はセ・リーグ唯一の2点台となる2.53。絶対的守護神、スアレスの抜けた穴は簡単には埋まらないと思っていたのですが、岩崎優、浜地真澄、湯浅京己、加治屋蓮といったセ・リーグ屈指のリリーフ陣と、既に11勝を挙げているエース青柳晃洋を中心に、安定した先発陣が試合をしっかりと作ります。

 攻撃陣も好調で、元オリックスのパワーヒッター、ロドリゲスが加入してからは負けなしの5連勝。ウィークポイントであった打線にも少し厚みが出てきました。

 一方、コロナ感染で主力選手が多数抜けた影響もあり、7月はこの日まで6勝13敗と大きく負け越していたスワローズ。

 後半戦スタートの試合をエース小川泰弘で落とすと、2戦目も先発・小澤怜史が4回に捕まるなどで連敗し、迎えた3戦目。

 この日も4回に2点を先制されると、打線の方は先発ガンケルの前に6回まで無得点。

 しかし、我らがスワローズにはこの男がいました。

 そう。4番、村上宗隆。

 7回、左キラーの渡邉雄大に0-2と追い込まれながらも、最後少し甘く入った外角スライダーをレフトスタンドへ運んだ本塁打。9回、守護神岩崎から放った起死回生の同点本塁打。そして、延長11回に放った決勝2ラン。

 この3本の何が凄いか。それは、全てを“読み勝ち”してのホームランだからです。

3打席連続本塁打を放った村上宗隆

引っ張りをやめ、外角狙いに変えた1本目

 まずは、7回表に渡邉から打った1本目。

 初球、内角に抜けたスライダーを見逃し。

 2球目、外のスライダーを引っ張りにかかって空振りで0-2。

 これを見たキャッチャー梅野隆太郎は、もう1球同じスライダーを要求するも僅かに外れ1-2。

 この時点で、村上はレフト方向に打つ事しか考えていなかったと思います。

 外に目付けをしている村上に外を投げたら、村上は打ちます。

 そんなホームランでした。

バッテリーの勝負する心理を読んだ2本目

 そして、9回表に守護神岩崎から打った2本目。

 この時、甲子園にはライトからレフトへと強く吹く甲子園特有の浜風が吹いていました。

 浜風の中、広い甲子園球場のライトスタンドにホームランを打つのは至難の業。

「岩崎の直球なら大丈夫」

 梅野はそう思ったはずです。

 村上は試合後のヒーローインタビューで、

「前の打席でレフト方向に打っていたので、勝負してくるな、インコースでくるなと思っていた。浜風なのでしっかり打たないと入らないなと思っていた」

 と言っていました。まさにこれぞ正真正銘の“読み勝ち”でした。

 それにしても、あの場面であの初球のインハイを一発で仕留めるのは凄まじすぎました。