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気持ちのよい応援とは…神宮球場のお立ち台に31年間立ち続けた男のこだわり

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/07/18
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 みなさま、初めまして。

 そして文春野球に佐々木誠が! ってテキストだけ見て飛んできた方、申し訳ございません。ダイエー、西武、阪神で活躍された佐々木誠さんではなく、先月、6月7日の文春野球の記事で長谷川晶一さんに取り上げていただいた、31年間、神宮のライトスタンドのお立ち台の上にたって、皆様の応援のお手伝いをさせていただいておりました方の佐々木でございます。

現役時代の筆者 ©佐々木誠

 あの記事の後、皆様に大変温かい言葉をかけていただき、本当にありがとうございます。あらためて、この場をお借りいたしまして、長い間の応援に御礼申し上げます。

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 世の中は狭いものでして、先日、スワローズファンの方に、引退のお祝いの会を開いていただいたのですが、その会にたまたま文春野球のスワローズ遠藤監督がいらっしゃいまして、同い年ということもあり意気投合し、あれよあれよという間に私も登板することとなりました。今しばらくお付き合いいただければと思います。

 さて、このコロナ禍になり、応援の方法も随分と様変わりしてしまいました。(そうか、ここ2年でプロ野球ファンになった方は以前の応援を知らないのか…と愕然としておりますが)以前はスタンドの真ん中に置いた「お立ち台」の上に立って、イニング前に皆さんに声をかけて盛り上げたり、この応援をやる!とかの全体の流れを決めたりするのですが、そのお立ち台でちょっとだけこだわっていたことを、少しだけ書いてみたいと思います。

「走れ走れ」コールをかける意味

 お立ち台に立ったあと、通常はバッターに対して「ホームラン」や「かっ飛ばせ」といったコールをしたり、応援歌を始めたりという選択をハンドサインやボードで伝達するのですが、足の速い選手がランナーに出ると、盗塁を促す「走れ走れ」コールをする選択肢が生まれます。

 足の速いランナーが出て投手が右投手であれば初球はだいたい牽制ですから、笑いを交えて応援に巻き込んでいく方法を好む私は、そこを逆手にとって「さあ! ここで走れ走れってコールして、もし投手に聞こえていたらきっとランナー気になって牽制球投げるから! そうすりゃ俺たちの勝ちだ!」なんて声掛けをして伏線を張っておくことで、実際に牽制球を投げてもらって皆さんに盛り上がってもらっていました。

言ったことがその通りになる応援の気持ちよさ

 みなさんも「自分が言った応援がその通りになったとき」は気持ちいいと感じませんか?そんな「言ったことがその通りになる(ことがある)」応援を目指すようになったきっかけ、それは私が入団してすぐだったでしょうか。その頃いらした先輩団員の一人は今でいう育成選手というのでしょうか、若いころは練習生としてスワローズのユニを着ていた方で、さすがに野球の知識と試合の流れを読む力はもの凄いものがありました。

 ジャイアンツ戦だったかな? 先輩が「よーし! ここで一発ホームランだから! 俺が『ファイトー!』っていったらみんなは『いっぱーつ!』って掛け声をかけよう!」そんな突拍子もない声掛けにファンの方々も笑うのですが、それでも乗っかってくれる。(別会社の飲料で掛け声かけても気にされない大らかな時代……)

 先輩がタイミングをはかり…

「ファイトー!」

「いっぱーつ!」(パッカーン!)

 ええ。見事にホームランでしたよ。

 そこで先輩に聞いたんです。「なんでわかったんです?」って。そしたら「そのうちわかるよ」と。

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