プロ野球中継は放送局にとっても戦いなのである。

 筆者は4月9日ロッテ×楽天戦のテレビ中継の実況を担当していた。宮城の県域放送のため、イーグルス応援実況になる。岸投手通算150勝の瞬間をどう伝えようか。そんなことを考えながら放送に臨んだ。試合展開は……非常に厳しいものだった。岸投手が2回までに6点を失うまさかの立ち上がり。もちろん、勝ち負けのあるプロの世界。こういうこともある。

 ただ選手同様、私たちも最後まで戦いの場から逃れることは出来ない。

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 なんとか視聴者を留めようと、解説の草野大輔さんと試行錯誤の時間が続く。ZOZOマリンは千葉出身の私としては勝手知ったる幕張の地。球場周辺情報を入れて場を繋ごう…するとこんなカンペが出る。「試合の話をして」仰る通りだ。すでにゲームはワンサイド。まずい……もう話すことがない……。そんな時、突如として希望の星が現れた。暗いトンネルの中を彷徨っていた我々に、一筋の光が差し込んだのだ。

イーグルス希望の星・内星龍

 3回パーフェクト、鮮烈なデビュー戦を飾った高卒3年目20歳の右腕・内星龍投手である。

 1軍初登板で3回からリリーフ登板。190cmの長身から放たれる力強い真っ直ぐと、鋭く落ちるスプリットで三振の山を築いていく。結果、3イニング打者9人と対戦。1人のランナーも許さない4奪三振。37球、圧巻の内星龍ショーだった。

内星龍

 そして、投球内容以上にSNS界隈ではあることが話題になっていた。

「山本由伸にそっくり」「似てるなんてレベルじゃない」と。

 そんな鮮烈なデビュー登板となった内投手に話が聞けた。初めて対面で、一対一で話を聞く。一つひとつの質問に、目をしっかり見て丁寧に答えてくれる。加えて高身長に優しそうな笑顔。10個以上下の子に、完全に恐縮しまくった自分がいる。“好青年”これが素直な感想だった。

――初登板、振り返っていかがですか?

「すごく緊張しました。出来たことと出来なかったこと。課題も見えた投球でした」

――ゲーム序盤からの登板でしたが、準備は出来ていた?

「ブルペンにはいつも初回から入って準備はしています。今日はあるかもなという展開になっていたので、この日は特に入念に準備していました」

――ようやく出番が回ってきた。

「ずっと登板がなかったので、ようやく来たかという気持ちでした」

――緊張したとのことですが……とても緊張しているように見えなかったですよ

「いやぁ……滅茶苦茶緊張しました(笑)。投げている時も、こんなに緊張するのかというくらい緊張しました(笑)」

 鮮烈なデビューと言えば、去年の宮森智志投手が記憶に新しい。デビューから22試合連続無失点、プロ野球タイ記録を作った宮森投手も初登板はすごく緊張した、と話していた。緊張したなんてウソだろう。「やべー俺全然勉強してない」と言いつつ90点くらい取ってしまう、テスト前にたまにいるアイツと一緒じゃないか。それとも緊張を上回る実力の持ち主ということか。