おそるおそるSNSを開いてみると…
そんなこんなでヒーローインタビューは盛り上がりましたが、終了後、私の気持ちが大変でした。声出し応援が解禁され、応援団の皆さんが新曲を作り、必死に声を出してコールをしているのに、それを勝手に変えてしまったのではないかと思ってしまったからです。SNSを開くのが怖い……。正直、「これ、SNSで叩かれるな」と……。
現在、私は千葉ロッテマリーンズの中継リポーターと、Rakuten.FMでラジオ実況を行なっていますが、横浜DeNAベイスターズのスタジアムDJ時代からヒーローインタビューも行っており、それらの経験を結びつけて活かし、中継とイベント感の両方を演出する、今のスタイルになりました。また、SNSを早くから始めていたこともあり、試合中、試合終わりにエゴサをすることが日常になっています。コロナ禍では、なかなか選手やファンの方にインタビューができませんでしたので、SNSを通じてのメッセージを中継中にもお届けしたこともありました。もちろん逆に、何度もSNSを通じて叱咤激励をいただくこともありました。
しかし結果的に、おそるおそる開いたSNSには、「みんなで『朗希コール』しようよ!」「本人が呼ばれ慣れてるのが一番いいんじゃない?」「ちゃんとライトスタンドに向いてお願いしてくれたね!」など、概ね好意的なコメントが溢れていて、これには私も安堵しました。
その2日後のZOZOマリンスタジアムでの楽天イーグルス戦、私は試合前にライトスタンドに向かいました。私は日頃から、試合前にスタンドの空気を感じるため、場内、場外を一周しているのですが、この日はライトスタンドから何か言われるかもしれないと思いながら回りました。しかし、ここでも多くのファンの方から、「『朗希コール』でやりますよ!」「南さんが聞いてくれて、オレたちも言いやすくなったよ!」などと声をかけていただきました。
それ以降、『佐々木コール』は『朗希コール』に変わりました。佐々木朗希投手は翌週(4月14日)、オリックスの山本由伸投手に投げ勝ち、ZOZOマリンスタジアムで再びヒーローに。「『朗希コール』いかがでしたか?」という質問に対して、ライトスタンドに向かって御礼をし、帽子を取ってアピール。さらにタイムリーを放った、年上の茶谷健太選手をいじるというお茶目な部分も披露し、ピッチングだけでなくトーク力も確実に上がっているところを見せてくれました。さらに一塁側スタンドの最前列の子供たちにサインをするというファンサービスも見せてくれていました。人間力が高く、それでいてまだまだ子供らしい表情をたくさん見せてくれる佐々木朗希投手に変わってきています。
コロナ禍で、なかなかファンと選手の心の距離が遠いところがありましたが、ライトスタンドの応援を受けた今シーズンの千葉ロッテマリーンズは、ZOZOマリンスタジアムでは10勝2敗(4月29日時点)。SNSは一つの手段ではありますが、心の距離を近くできるのは、やはりリアルで選手たちの声を聞き、選手たちは生で声援を受けることだと思っています。
そして、その双方の声をつなぎ合わせるハブになるのがインタビュアーだと感じています。選手たちに一番近くで質問できる我々は、ファンであり、発信者であることを胸に、これからも声を届けていきたいと思っております。
最後に、寛大な心でコールを変更していただいた千葉ロッテマリーンズ応援団に感謝申し上げます。ありがとうございます。これからも共に進んでまいりましょう。
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