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「誠、頑張れ!」元カープ・中田廉が一目置く男、アドゥワ誠から相談されていたこと

文春野球コラム ペナントレース2023

2023/05/09
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「体重増やしたいんですが、どうしたらいいですか?」

 後輩からはアドゥさん、アドゥさんと慕われ、先輩からも可愛がられる選手。いつも前向きで明るい選手。「ポジティブ」とはアドゥワ投手の事をいうんだと思うほどです。

 そして、一見考え事をするタイプではないように見えますが、野球脳が優れていて、常に自分の伸びしろと向き合っていました。

 そんなアドゥワ選手とよく話していたお話をここで紹介したいと思います。

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「廉さん、体重増やしたいんですが、どうしたらいいですか?」

 まずは1日の中で空腹状態を作らないこと。これをアドゥワ投手にずっと自分はアドバイスしていました。

 アドゥワ投手は元から体脂肪が少なく、まるで筋肉の鎧でできているスーパーアスリート型の身体でした。自分の予測なので定かではありませんが、おそらくフィールドトラック選手のような体型で基礎代謝が高く、脂肪を燃焼しやすい身体なのでしょう。

 アドゥワ投手の食事量、運動力を見ていても、量を食べられずに痩せていく選手ではなく、むしろ良く食べる選手でした。ここに活路を見いだすポイントがあると考えました。

 食べられるということはスポーツ選手にとって本当に大切なことで、自分の経験から食い力がある選手で活躍していない選手はいないと思っています。

 アドゥワ選手の食事量だと大きくなれる要素しかありませんでした。

 そのアドバイス以降、常にプロテインゼリーを飲んでいる姿を見ては、すごいなと。自分に投資をできる選手だなと感心していました。

 最初は大きくなったと思いきや、「また痩せました」の繰り返しで、時間はかかったかもしれませんが、ある日から「痩せました」と言わなくなったのを覚えています。

進化したアドゥワ投手の武器

 2022年は手術した肘も随分馴染み、試合では投げることができましたが、結果は出ない苦しいシーズンでした。アドゥワ投手の中でも焦りや悔しさも当然あると思います。

 アドゥワ投手の最大の武器はシンキングファーストボールという、表現が少し丁寧ではないですが、汚く動く真っ直ぐです。

 近年、MLBではツーシームを投げる投手が続出しました。ツーシームはバットの芯を外し、打球がゴロになりやすいという、2018年以降にフライボール革命という時代がMLBに到来し、そのフライボール革命に対抗するように流行り出したボールです。

 アドゥワ投手はツーシームではなく、ストレートを投げるだけでボールが動く摩訶不思議な投手とも言えます。指の長さや、リリース位置、ボールに対しての圧の掛け方など、様々な要素があって独特なボールの変化を生んでいるのでしょう。

 ただ、2020年から2022年のアドゥワ投手の球速は140km前半でした。近年のプロ野球の投手としては平均球速に比べて少し遅く少し物足りない数字です。

 スピードが全てというわけではありませんが、あればもちろんいいもの。

 しかし、今年のOP戦を見た時になんと球速が上がっていました。140km前半のアドゥワ投手ではなく、140km後半のアドゥワ投手になっていたのです。

 アドゥワ投手の動くボールにスピードがつくと、打者のミスショットが増えて、存在価値が更に高くなると確信しました。

 ただ、今がアドゥワ投手の最高値ではなく、まだまだ発展途上だと思います。

 今季は開幕から一軍でリリーバーとしてチームの戦力として貢献していました。現在は二軍にいますが、更に高みを目指しながら自分のウィークポイントを伸ばすために頑張っていると思います。

 必ずまた一軍に戻ってきて、チームのため、ファンの皆さんのために活躍してくれるはずです。

 自分もアドゥワ投手の摩訶不思議なストレートを見れるのを楽しみにしています。

 誠、頑張れ!

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