借金9で単独最下位をひた走る苦しいチーム状況。何とか明るい材料を探すのが担当記者の気質というのか、使命というのか……。パ・リーグの打撃成績を見ていたら、チームの首位打者が小深田大翔(2割4分2厘)、次点が山崎剛(2割3分5厘=ともに5月28日終了時点)という数字が目に入った。
小深田はパ・リーグ16位で山崎が同18位。開幕から主軸の浅村栄斗と島内宏明がピリッとしない中での奮闘だ。ファンも「2人はよく頑張っている」と感じているのではないだろうか。記者は30日から始まる交流戦のキーマンに、この「コブ・ヤマ」コンビを推している。
藤田一也が語る弟子2人の成長具合
小柄で同じ右投げ左打ちの内野手と似ている点も多いが、もう一つ共通点がある。ともにDeNA・藤田一也の門下生だということ。2人はルーキー時代の20年のオフから球界屈指の名手に弟子入りして合同自主トレを行ってきた。
5月下旬。2人の師匠に電話を掛けた。21年のオフに戦力外通告を受け、その後は古巣のユニホームを再び着ることになったが、今でも後輩たちが頑張る姿を時間の許す限り追いかけている。弟子たちについて率直に新人からの成長具合はどうか聞いてみたら、いつもと変わらぬ明るい口調で答えてくれた。
小深田の控えめな性格を知る藤田は「今まではこっちが(アドバイスを)言うまでずっとしゃべらずにいたけど、今年は自分からバッティングについて質問してくるくらいになった」と証言。プロで生き抜くために必要な「貪欲さ」が身についてきたことに加えて「どんどん体も強くなってきて、バッティングにも力強さが出てきた」と心身両方の成長を感じていた。
近大の後輩でもある小深田は「1年目は大学の先輩ということもあって自分は遠慮していた部分があった」というが、今年1月の自主トレではこれまでとは違い、ガンガン質問攻めにするまでになり、藤田も「プロの自覚が出てきた」と、どこか感慨深そうだった。
一方、「守備が得意じゃなかったので守備がうまい人に聞こうと思って(自主トレ参加を)お願いした」という山崎は「守備面では体の使い方だったり、考え方も勉強になることばかりでした」と回想。「体をしっかりと扱えないと、技術はうまくはならない」との金言を授かったことで、これまでは「技術力を上げることばかり」を考えていたが「どういう体の使い方をすれば守備が上達するのか」と、思考に変化があったという。藤田も「剛は個人トレーナーをつけて体の事を勉強したりするようになって、いい感じにプロらしくなってきた」と成長を感じていた。
開幕からハードな動きが多い遊撃のポジションを守る山崎が念頭に置いていることが「楽に動く」。と言っても手を抜くことではない。語弊があってはいけないので詳しく説明すると、藤田から学んだ「無駄を省く」ことを意識してプレーしている。これはゴールデン・グラブ賞を3度獲得した球界屈指の守備職人が大事にしている心得でもある。