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「中国スゴい!」「深圳スゴい!」って、それ本気で言ってる?

「B級中国 vs.S級中国」中国ITへの過大評価をぶった切る #1

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おじいさんはケント・ギルバートの本を買い……

安田 近年、日本の地方年配層へのファーウェイの浸透って、どうやらすごそうです。毎日放送(MBS)という大阪のラジオ局の朝の番組に、『ありがとう浜村淳です』という昭和40年代から続く人気番組があるんですが……。

山谷 高齢の聴取者もかなり多い、関西の老舗ラジオ番組ですね。

安田 先日、その番組を聞いていた。そうしたら「離れて暮らす息子から写真を送ってもらいませんか? 孫の動画を撮りませんか? すぐ忘れる話を録音しませんか? そんなあなたにファーウェイのスマートフォン。お求めの方は0120-xxxxへいますぐお電話を」みたいなCMを番組中のラジオショッピングで流していたんです。

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山谷 ファーウェイのマーケティング能力のハンパなさですね。ラジオの通販CMを聞いてスマホを買う行動なんて、従来のスマホユーザーの価値観では想像しづらい。ただ、確かに「普段の情報源はラジオ」「息子からLINEが来ればOK」くらいの年配層は、高価なスマホを欲しいとは思っていないわけです。物凄いニーズを掘り出しています。

安田 おじいさんは書店でケント・ギルバートの中国批判本を買い、おばあさんは浜村淳の番組内CMでファーウェイの大特価スマホを買い、パリピ青年の桃太郎はTikTokに「め組」ダンス動画を投稿して盛り上がりました。めでたしめでたし……。これが2018年の日本の田舎と、中国との関係です。

全世界に進出するファーウェイのスマートフォン ©iStock.com

アフリカから滋賀県まで席捲する中華スマホ

山谷 ところでファーウェイをはじめとした中華スマホは、日本だけでなく全世界に進出しています。例えばアフリカでは、ファーウェイよりも伝音(TRANSSION)というメーカーの存在が大きくて、めちゃめちゃ売れているんですよ。

アフリカで人気の伝音TECNOブランドのスマートフォン。(2018年11月山谷撮影)

安田 アフリカで売れまくっている中華スマホか。商魂スゴイなあ。

山谷 アフリカを旅行している人から、実況のような形で現地の街の様子を写真で見せてもらったことがあるんですよ。伝音のブランドであるTECNOブランドの青い看板があちこちにあった。 

安田 ニセ日本語の看板で話題になった、雑貨店の「メイソウ」みたいなもんですね。B級感にあふれた会社だとバカにしていたら、気づいたら世界中どこにでも店ができていた。

山谷 ですです。そんな感じでアフリカ中どこでも伝音の広告があって。今、メーカー別では世界第5位の出荷台数だというんですよ。それでいて、この謎っぷり。僕は超マイナーなスマホ集めが趣味なんで、最高にたぎる製品ですね(笑)。