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第32作『男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎』(1983年)
第38作『男はつらいよ 知床慕情』(1987年)
第41作『男はつらいよ 寅次郎心の旅路』(1989年)

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別のヒロイン役で3作品に出演

 浅丘ルリ子さんが演じたキャバレー歌手のリリーは6作品に、吉永小百合さんが演じた東京のOL・歌子は2作品に登場します。私も3作品に出演しましたが、それぞれ別のヒロインを演じました。どうしてそうなったんだろう……私自身も謎ですが、各作品の脚本で描かれたヒロインの性格や行動がたまたま私に合っていたのかなと、そう考えることにしています。

竹下景子(たけしたけいこ)/1953年、愛知県生まれ。映画『犬笛』やドラマ『北の国から』などに出演。『クイズダービー』のレギュラー解答者も務めた。94年、日本アカデミー賞優秀助演女優賞受賞(『学校』)。撮影:篠山紀信

 まず『口笛を吹く寅次郎』のオファーが来た時は、「まさか松竹の看板映画に私が!?」と驚きのほうが強かったんです。戸惑う私に、島津清プロデューサーが「大丈夫です、監督さんは万事心得てますから安心していらしてください」と優しく教えて下さって。不安を抱えつつ岡山県高梁(たかはし)市へロケに向かったのですが、宿につくや否や知恵熱が出てしまって。無事にクランクインは出来たんですが、私なりにプレッシャーだったんですね。そんな私をセッティングの折などで、山田洋次監督や渥美さんが優しく雑談をしてくれたりしてほぐしてくださいました。

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 そういう現場の朗らかさは作品にも如実に出てると思います。博(前田吟)の父の墓参りに訪れた寅さんが、帰り道で酔っ払った住職(松村達雄)と、私が演じる娘の朋子に出会います。出会った階段で、寅さんは住職には素っ気なかったのに、朋子を見るやポーッとしちゃうから可笑しい。そこから渥美さんが圧倒的に元気溌剌! 翌朝、寺から帰ろうとする寅さんを朋子が引き止めると、「朝ご飯を頂いてバカっ話をしているうちに、すぐお昼です。『蕎麦にしますか、おうどんにしますか?』『そうですねえ』なんて言ってるうちに三時のオヤツですから……」と縷々語る場面がありますね。私は傍でリアクションを取るために緊張してるけど、それでも渥美さんの話芸に思わず顔が綻んでました。その後、二日酔いの住職に代わり坊主として法事に行き、インチキ説法を披露したり、柴又に帰って、御前様(笠智衆)のもとで煩悩まみれで修行を始めたり、俳優・渥美清=寅さんはノリにノッてました。

 そしてラスト、寅さんは朋子をフります。周囲は「知的な美女? ダメだそりゃ」と、絶対寅さんがフラれると信じているのに、意外や意外の展開。朋子はあんなに思いを込めて、寅さんのドテラの袖をギュッと掴んだのにねえ。あの場面が好きだと仰る方が多いんですが、監督の指示通り演技したんです。あれこそ演出のマジックだと思います。