バブル崩壊以降、なぜ日本経済は長期低迷に陥ってしまったのか――。話題を集める新書『株高不況』(青春新書)より一部抜粋し、その理由を解き明かす。(全3回の1回目/続きを読む、もっと読む)
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日本経済の長期停滞をもたらした一因「履歴効果」とは?
一方で、株価が低水準にあると企業経営者は自信を失い、コスト削減など守りの経営に傾いてしまい、賃金の低下や設備の老朽化などを通じて、やっかいな長期停滞の遠因になります。
理由はともあれ、日本経済は長期停滞を経験しました。そして今も完全には抜け出せていません。その背景を説明する一助になるのが「履歴効果」という経済用語です。
履歴効果とは、一度生じた負の経済ショックが短期的な影響にとどまらず、長期的な成長に影響を与えてしまう現象を指します。日本ではバブル崩壊後、不良債権を抱えた企業が財務体質の健全化を最優先するようになったことで、成長のために必要だった設備投資や人的資本の開発が後回しにされ、中長期的な成長力が失われました。
本来であれば、財務の健全化に一定の目途がついた段階で元の成長軌道に戻るはずだったのですが、不況期の投資不足が仇となり、製品開発が遅れたり、優秀な人材が不足したりすることで、不況が長引いてしまった面がありそうです。経営者のマインドが萎縮して「守りの経営」が定着してしまったことも広義の履歴効果と言えそうです。
2000年代後半、日本の電機メーカー(民生機器、半導体)が苦境に陥ったのは、韓国勢や中国勢の追い上げの他、不況期に設備や人材投資が途絶え、先端モデルの開発が遅れたことなども影響したように思えます。同時期には優秀なエンジニアが数多く外資系に流出したと聞きます。





