「YouTubeというプラットフォームが全盛期になったいま、『界隈』ごとのスターは生まれるが、皆が知るスターは生まれづらい」
現代のメディアについてこう分析するのは、文芸評論家・三宅香帆氏だ。ここでは、著書『考察する若者たち』(PHP研究所)の第7章「ヒエラルキーから界隈へ」から一部を抜粋して紹介する。「登録者数の多いYouTubeチャンネル」をあなたはいくつ知っているだろうか?
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「アルゴリズムが思想を過激化する」は本当か?
昨今、アルゴリズムという言葉をよく耳にする場面の一つは、政治的意見や選挙の問題を語るときではないか。
たとえばある選挙の際、SNSに自分の支持する政党の応援投稿しか流れてこなくなる現象が現代のSNSアルゴリズム上では起きているのだと言われることは多い。過激な陰謀論や女性不信の言葉がアルゴリズムによってさらに助長され、表示されるのである、と。
しかし、じつはこのようなエコーチェンバーと呼ばれる現象に対し、「アルゴリズムが思想を過激化させる」効果については昨今では否定されつつある。クリス・ベイル『ソーシャルメディア・プリズム SNSはなぜヒトを過激にするのか?』(松井信彦訳、みすず書房、2022年〈原著は2021年〉)は、インターネットプラットフォームのアルゴリズムが人びとの思考を過激化させた、という昨今の言説についてノーを突きつけている。
アルゴリズムが過激化を促しているという見解を支持する証拠は驚くほど少ない。計算社会科学者のグループがこの件について行った大規模な調査によると、穏健なコンテンツからより過激なコンテンツへと進んだユーチューブユーザーはいるにはいたが、その割合は推定で10万ユーザーにつきわずか1ユーザーだった。同様に、この数年前にフェイスブックユーザー1010万人を対象に行われた調査によると、フェイスブックで見られたイデオロギー的差別の圧倒的多数の原動力は、関わる対象についてのユーザー自身による判断であり、ユーザーが目にするメッセージの順序を決めるアルゴリズムではなかった。(クリス・ベイル『ソーシャルメディア・プリズム』)




