少女への性的虐待などの罪で起訴され、2019年に自殺した米富豪ジェフリー・エプスタイン氏。彼と各界要人の関係を明かした捜査資料「エプスタイン文書」の詳細が公開され、その衝撃が各方面に及んでいる。
膨大な量の「エプスタイン文書」だが、その中にある140万通の電子メールを解析し、米史上最大の性犯罪者の実像に迫った英「エコノミスト」誌のレポート全文が、月刊「文藝春秋」4月号で紹介された。以下はその一部である。(近藤奈香訳)
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有力者が職を追われる
ほぼ10年にわたり、ジェフリー・エプスタインの生活に関する情報は断片的にしか明らかになっていなかった。しかし昨年11月、アメリカで検察官の捜査資料の公開を義務づける法律が成立したことを受け、その滴(しずく)のようだった情報の流れは一転し、激流となって噴き出した。
1月30日、米司法省は300万ページを超える文書を公開した。この公開により、ニューヨークの大手法律事務所の会長ブラッド・カープ、スロバキアの国家安全保障顧問ミロスラフ・ライチャク、パリの文化施設アラブ世界研究所の所長ジャック・ラングなど複数の有力者が、すでに職を追われており、今後さらに増える可能性が高い。米国議会議員らからの異議申し立てを受け、司法省はこれまで黒塗りにしていた氏名の開示にも動き出している。
記録はあまりに膨大で、たとえその一部であっても、いまだ誰も読み通せていない。幸い、ソフトウェア技術者のグループがPDFを分析しやすい形式へと変換した。彼らはAIツール「Reducto」を用いて、電子メールを含むファイルを特定し、送信者・受信者・日付・件名・本文を抽出して、それらを「Jmail.world」というウェブサイトに公開した。
このグループは最終的に140万通のメールを処理し、その作業を2月11日に完了した。『エコノミスト』誌は彼らと協力し、表記の揺れや複数のメールアドレスを統合して、各メッセージを固有の個人にひも付ける作業を実施した。同時に、最も頻繁に登場する500人の経歴を調査した。さらに大規模言語モデル(LLM)を用いて各メールのやり取りを分析し、一般読者にとってどの程度不穏・不快な内容かを数値化した「不穏度指数(alarm index)」を作成した。
エプスタインの通信の大半は、スタッフや業務委託先、ビジネス上の取引相手とのやり取りだった。彼に雇われ、あるいは共に働いていた人々は、頻出上位500人のうち約3分の1を占め、全メッセージのほぼ5分の3に関係している。その中心は秘書のレスリー・グロフ、会計士のリチャード・カーン、専属パイロットのラリー・ヴィソスキらである。ニューヨークやパームビーチの邸宅、さらにはカリブ海の私有島を維持するには、多数の業者や、家事スタッフが欠かせなかった。


