2009年11月6日から19日にかけて、広島県北広島町の山中で、島根県浜田市にある島根県立大学1年生、Aさん(当時19)のバラバラに切断された遺体が発見された事件。犯人の特定まで7年間もの時間を要した。

 警察は当初、遺体があまりにも鮮やかに解体されていたため、動物の解体方法を知る猟師や、解剖の知識に長けた医療関係者などに対して、疑いの目が向けられていた。 ノンフィクションライター・小野一光氏が、島根女子大生バラバラ殺人事件の「その後」を追う。

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警察の“事前調査”

 では現実にはどのような捜査が行われていたのか。私は当時、捜査対象としてマークされた2人の男性に話を聞いている。

 北広島町で一人暮らしをしながら、林業関連会社に勤めるXさんは言う。

臥龍山に向かう国道186号線に設置されたNシステム(2025年3月、筆者撮影)

「最初、(09年)11月の半ば過ぎに勤め先の会社から自分に電話があり、『警察が(Aさんの事件で)事情を聞きたいと言っているから、知っていることを全部話すように』と言われたんです。しかし、それからしばらくは何の動きもありませんでした」

 Xさんが身のまわりの変化に気づいたのは、12月になってからのことだ。

「車で移動中、いつも同じ車を見かけるようになったのです。気づいてから10日間くらい連続してありました。こちらがスピードを落としたら向こうも落とし、飛ばしたら向こうも飛ばす。さすがに気持ち悪いので、車を停めて話を聞こうとしたら、そのまま追い越していくのです」

 事前に会社を通じて警察が話を聞きたい旨を伝え、捜査の目が自分に向けられていることに動揺した彼が、証拠隠滅や逃亡を図ったりしないか、行動確認をしていたのである。

「その後、12月23日に初めて2人の刑事が自宅にやってきました。10月26日に浜田市で何をやっていたのか聞かれたので、もし浜田に行くとすればパチンコだと答え、店名を伝えました。それから捜査員がチェーンソーや鎌といった仕事道具と、風呂場を見せて欲しいというので見せました。仕事に使う刃物類は室内に置いてあり、刑事はそれを一つずつ見て、さらに浴室内を見てまわり、20~30分程度で帰っていきました」

 Xさんは10月26日の午後10時30分頃に金城地区を通過しており、そのことで疑いを受けていた。2日後、刑事2人がXさん宅にふたたびやって来て、パチンコ店以外の立ち寄り先を聞いている。