高市早苗政権の官邸幹部による「日本は核兵器を保有すべきだ」という発言が問題視され、「日本の核武装はそもそも米国が許さない」とも指摘される現在。いわゆる「米国の安全保障コミュニティ」の“内部の人間”──国際安全保障、また国際法・国際規範を専門とするふたりの有識者──は、日本への「選択的(友好的)核拡散」を推奨する。
米『フォーリン・アフェアーズ』誌に2025年11月19日付で掲載されたモーリッツ・グレーフラス氏とマーク・レイモンド氏の共著論文「Americaʼs Allies Should Go Nuclear」が、「文藝春秋」4月号で全訳された。その一部を掲載する。(編集部訳)
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「核兵器の拡散」についての“思い込み”
「核拡散の可能性」ほど、安全保障の専門家や政策立案者を恐れさせるシナリオはない。
ウクライナ戦争でロシアが「戦術核兵器の使用」をちらつかせていること、ドナルド・トランプ米大統領が曖昧ながら「核実験」に関心を示していること、2010年の新START条約(米露の核弾頭数を制限)の期限切れが迫っていること〔2026年2月5日に失効〕などが、核兵器の変わらぬ破壊力を世界に思い起こさせ、その使用に対する恐怖を再燃させている。
「核兵器の拡散」は、米国の戦略的利益を深く傷つけ、すでに脆弱な世界秩序をさらに不安定化させると、米国エリート層の多くは思い込んでいる。実際、この数カ月、彼らは核拡散防止への関与を強めており、2025年6月のイラン核施設への攻撃では、核拡散阻止のためには武力行使も辞さない姿勢を示している。弾道弾迎撃ミサイル制限条約(ABM条約)のような冷戦期の軍縮協定が失効した後の数十年間も、米国は核不拡散を中心とした核秩序の構築に力を注いできた。
もちろん、信頼できない国家や敵対国への核拡散に反対するのは理にかなっている。だが、「核拡散への全面的な反対」は、核兵器がもたらし得る「大きな利益」を見えなくさせてもいるのだ。
今こそ米国は、不拡散政策への厳格な拘りを改め、少数の同盟国――具体的にはカナダ、ドイツ、日本――には核保有を促すのが賢明だろう。




