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第一線で活躍する学芸員が注目する美術展とは——14人が今年のおすすめと昨年のベストを選んだ。この中から、一部を抜粋掲載します。
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達人×達人のかけ合いをたっぷりと味わう
[選定者]蔵屋美香(くらや・みか):横浜美術館館長。東京国立近代美術館企画課長を経て、2020年より現職。東京国立近代美術館では、「ぬぐ絵画 日本のヌード 1880-1945」(2011年)、「没後40年 熊谷守一 生きるよろこび」(2017年)などを企画。著書に『もっと知りたい岸田劉生』など。
[2025年のベスト]「望月桂 自由を扶くひと」展(原爆の図丸木美術館) 2025年4月5日〜7月6日
[2026年のおすすめ展覧会] 「ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ」展(国立新美術館) 2026年6月10日〜9月21日
さあ新年度。これからどんな展覧会が見られるのかな、とワクワクします。
個人的に楽しみなのは、「ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ」です。ピカソの名前は知っているけれど、ややこしくて見方がわからない、という方も多いはず。この展覧会では、イギリスの著名なファッションデザイナー、ポール・スミスが、ピカソの作品に合わせてカラフルな壁紙をデザインします。壁紙が絶妙なヒントとなって、あ、ピカソはこんなことを考えてこの色の組み合わせを選んだのかな、と、新しい鑑賞の手がかりが得られます。達人×達人のかけ合いをたっぷりと味わえそうですね。
こうした大規模な国際巡回展もすばらしい一方で、低予算でも心に響く展示があります。わたしが2025年にもっとも記憶に残ったのも、そんな企画のひとつ。これからしばらく工事休館となる原爆の図丸木美術館(埼玉)で開催された、「望月桂 自由を扶くひと」です。望月は、戦前に活躍したプロレタリア美術の画家です。しかし、一膳飯屋を営んだり、漫画雑誌を出したりと、その活動は美術の枠を超えて縦横無尽。戦後は地元で静かに生きた作家の多彩な活動を、研究者やアーティストが集まって一つひとつ掘り起こしました。
最後にもうひとつ。期間限定の華やかな展覧会に目が行きがちですが、その館ならではの所蔵作品を見に行くのもおすすめです。たとえば青森県立美術館には奈良美智のコーナーが、岩手県立美術館には萬鐵五郎や松本竣介、舟越保武のコーナーが、それぞれ常設されています。好きな作家の作品がいつもそこにある。だから会いに行く。そんな美術館が人生にあるって、すてきだと思いませんか。




