世界は今、アメリカを震源地とする巨大な「地殻変動」の最中にある。新自由主義※1が終わりを告げ、アメリカが自ら築いた秩序を自ら破壊する「ゲームチェンジ」が加速している。しかし、これは日本にとって悲劇ではない――。

 30年にわたり世界のマネーの奔流を見てきた齋藤ジン氏は、この変革こそが、日本が長きにわたる「脱デフレ・低成長」から脱却し、相対的な勝ち組へと浮上する千載一遇のチャンスだと断言する。トランプ2.0がもたらす破壊の正体と、日本企業・投資家が取るべき「勝ち筋」とは何か。「超インフレ時代を生き抜くための新・投資入門」(文春MOOK)より、一部抜粋し、その理由をお届けする。(全3回の1回目/続きを読む

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ジャイアン化したアメリカ

 世界はアメリカを震源とする地殻変動の真っ只中にあり、これから起きる変化は日本に有利なものとなる―。日本のみなさんにそう伝えたく、2024年12月、初めての著書『世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ』を刊行させて頂きました。ヘッジファンド※2などプロの資産運用者に助言するコンサルタントとして、世界のマネーの奔流を30年近く見てきた経験をもとにしたものです。その直後の2025年1月に第二次トランプ政権(トランプ2.0)が発足し、世界秩序の変化は加速度的に進んでいます。

©AFLO

 現在起きている地殻変動は、アメリカが戦後に築いた秩序を自ら破壊し、新しい秩序をつくるプロセスだと私は捉えています。これまで国際連合やWTO(世界貿易機関)をはじめ、国際的な組織やルールの枠組みで自国を縛ってきたアメリカが、「ドラえもん」になぞらえれば、“ジャイアン”として振る舞うようになったのです。

 そんなアメリカに対して「国際法に違反したら、中国やロシアに対して説得力がなくなる」と非難する人がいますが、中国の習近平国家主席やロシアのプーチン大統領が国際法や国際世論を気にしているとは思えません。

 実際、ロシアはクリミアを一方的に併合し、ウクライナに侵攻しました。中国も香港の自治を約束した国際公約を破り、南シナ海でも一方的な軍事拠点化を進めています。

 国際法は警察のような執行機関を伴わないので、習氏やプーチン氏の様な強権指導者は最後、「パワー」にしか反応しません。しかし覇権国のアメリカが「パワー」を前面に出すと、力が全ての「ジャングルの掟」の世界になってしまいます。そこでアメリカは過去、一定のルールを自らに課すことで、偽善を指摘されながらも、ルールを執行する「警察官」の役割を果たしてきました。しかし法で手足を縛られる中で反グレ集団と対峙する警察の様に、アメリカが世界の警察官を務めるコストは多大です。しかも非難されることはあっても、感謝されることは殆どありません。そこでトランプ氏は、「こんなバカバカしい役回りはやめた。ジャングルに戻って困るのはアメリカじゃない」、そう開き直り、パワーで語りだしたのです。