トランプ2.0がもたらす破壊の正体と、日本企業・投資家が取るべき「勝ち筋」とは何か。「超インフレ時代を生き抜くための新・投資入門」(文春MOOK)より一部抜粋し、30年にわたり世界のマネーの奔流を見てきた齋藤ジン氏が日本の進むべき道を提言した。(全3回の2回目/最初から読む)
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WTO体制下の自由貿易はすべての参加者がルールを守るなら、経済効率は高くなります。しかし、中国や非市場国は自由貿易の「いいとこどり」をしていました。WTOという相撲の土俵に、総合格闘技のルールを持ち込むようなものです。
端的に言うと、新自由主義の理想は、基本前提を共有しない非市場国の強権国家に敗れ、それを維持することはアメリカの国益に反することが明確になっていたのです。
バイデン政権もこの問題点に気づいたので、何とか自由貿易体制を維持しながら、中国を除外したサプライチェーン※1を構築しようとしていました。しかしこれは癌患者に、風邪薬を飲めば何とかなるというような話でしょう。
トランプを支える「尊王攘夷」連合軍
トランプ氏は世界がひとつのハッピーファミリーだという前提そのものを破壊し出したのです。それはグローバリズムに対し、「国家」を取り戻すことであり、それが「アメリカ・ファースト」です。民主国家の政治家がグローバリズムの理想に心酔するのではなく、一度「国益」を考え出せば、国内で最重要なのは雇用対策、対外的には安全保障なのは自明です。
その手法の是非は議論されるべきですが、トランプ氏の問題意識そのものは的を射たものだと言えます。
トランプ氏の言動に右往左往するのではなく、大局的にトランプ現象を捉えると、幕末の尊王攘夷運動に似ていると思います。尊王を拡大解釈し、天皇を中心とした中央集権国家を構築する、攘夷を富国強兵と置き換えると、大きな時代の方向性に沿っていたような気がします。
産業革命により、生産能力が革命的に飛躍する中、英仏という中央集権国家による権益拡大の圧力に対し、独伊が中央集権化したタイミングと、明治維新は重なります。つまり幕藩体制を維持したままでは、列強には伍していけなかったのかもしれません。
先ほども指摘しましたが、バイデン政権は、国際主義を維持しながら中国の脅威をどの様に排除するか、という課題を解決しようとしました。これは冷静で合理的に聞こえますが、幕藩体制を維持するという前提の議論に似ています。
一方、トランプ氏は尊王攘夷を叫んで刀を振り回している「危ない人」の様ですが、最終的に、アメリカの雇用と安全保障を再構築するという二つの目標を達成するには、既存システムを破壊するというトランプ氏の大局観は正しいのかもしれません。
尊王攘夷派には、大久保利通のように大きなビジョンを持っていた人もいれば、坂本龍馬もいて、西郷隆盛のように武士の世を終わらせるつもりがなかった人も呉越同舟していましたが、「幕藩体制を破壊する」という一点でまとまっていました。
トランプ2.0の凄さは、「新自由主義の破壊」を望む人たちの連合軍をつくったことです。メインは、MAGA(“Make America Great Again”の略。アメリカを再び偉大に)派といわれる労働者や貧困層。彼らは「国内に製造業を戻してくれ。国境を取り戻して、アメリカという国を大事にしてくれ」と訴えています。





