「ホームランは力じゃない」落合の打球は、福留には真似できない軌跡で飛んだ。
(すずきただひら 1977年千葉県生まれ。日刊スポーツ新聞社に入社後、中日、阪神を中心にプロ野球担当記者を16年経験。2019年よりフリー。著書に『清原和博への告白 甲子園13本塁打の真実』、取材・構成担当書に『清原和博 告白』、『薬物依存症』がある。)
《そろそろだろう……》
福留孝介は時計の針が午後4時をまわると、ロッカールームを抜け出した。チームメイトは食事を摂ったり、音楽を聴いたりしている。試合前の練習を終え、プレーボールまで束の間の休息だ。
それを尻目に、福留はひとりベンチ裏の通路を抜け、ホームベース後方にあるブースへと向かう。そこはオーナーや球団幹部が観戦するための部屋だったが、この時間はまだ誰もいない。その真っ暗な部屋の中からグラウンドを見る。相手チームの練習にじっと見入る。2006年シーズンの福留は、広島戦の前に限って、その特別な行動を取った。
福留の視線の先にいたのは前田智徳だった。球界において広く、天才として知られたバッターだ。
2カ月99円で
この続きが読めます。
有料会員になると、
全ての記事が読み放題
-
月額プラン
99円/最初の2カ月
3カ月目から通常価格2,200円
期間限定
-
年額プラン
22,000円一括払い・1年更新
1,833円/月
既に有料会員の方はログインして続きを読む
※オンライン書店「Fujisan.co.jp」限定で「電子版+雑誌プラン」がございます。ご希望の方はこちらからお申し込みください。
有料会員になると…
世の中を揺るがすスクープが雑誌発売日の1日前に読める!
- スクープ記事をいち早く読める
- 電子版オリジナル記事が読める
- 解説番組が視聴できる
- 会員限定ニュースレターが読める
source : 週刊文春 2020年10月1日号