【前回までのあらすじ】「ほんとは私――友だちを二人殺してるんだ」。「週刊文春」記者の速水理央(34)は、恋人に高校時代の過去を打ち明ける。他方、ニュース番組『フラッシュ11』のメインキャスター・鷲尾粧子(50)は、大御所芸人のウォッチャー目黒に強姦された後輩のディレクター・加藤大地を思い、番組での目黒の身辺調査を提案するも却下されてしまう。

 

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 夜半から明け方にかけて雪になるとの予報だったのに、みぞれがほんのわずか降っただけで朝にはすっかり雨だった。斎場に張り巡らされた鯨幕が、冷たく湿った風に膨らんだり凹んだりしていた。

 参列したのは近親者のほかには故人にごく近しい者のみで、知り合いは誰もおらず、粧子は隅のほうで目立たないようにうつむいていた。葬儀が終わり、これから火葬場へという時になって、喪主がそばへ来た。

「ありがとう、来てくれて」

 辺見鷹文は言った。声はしっかりしていたが、めっきり老けこんだ様子に粧子は改めてショックを受けた。

『フラッシュ11』のメインキャスターを退いてから何年も経ち、すでに齢八十を過ぎているのだから当然、と思ってみても、単に白髪や皺やシミが増えただけでなく、顔から張りが失われている。認知症を患った愛妻の介護は、体力も気力も削られる日々だったのだろう。

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source : 週刊文春 2026年1月29日号