【前回までのあらすじ】ニュース番組『フラッシュ11』のメインキャスター・鷲尾粧子(50)は、後輩のディレクター・加藤大地から大御所芸人のウォッチャー目黒に強姦されたと打ち明けられるが、咄嗟の対応を誤り後悔する。他方、加藤と大学時代からの親しい友人である「週刊文春」記者の速水理央(34)は、この件を記事にすべく目黒への突撃取材の機を狙っていた。

 

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 不本意ながら、そうとう〈かかって〉いるものと思われたらしい。

 競走馬が興奮している時などによく使われる表現だが、記者の場合は、取材対象への思い入れが強すぎて気持ちが先走り、空回りしたり暴走したりすることを指す。要するに、一人で事に当たらせては危険と見なされたということだ。

「カキは速水さんに任せるけど、鬼島(おにじま)さんをつけるから。必ず一緒に動くこと。それが条件」

「週刊文春」編集長の西岡に言われ、理央はしぶしぶ頷いた。

 レイプ被害に遭ったのが大事な友人ということで、ふだんとはギアの入り方が違っている自覚はあったが、こっちだってそれなりの場数は踏んでいるし、もうちょっと信用してくれてもいいのに、と思う。相方として指定されたのが十も年上の特派記者であることも、いい気はしなかった。理央としては若い後輩をつけてもらうほうが動きやすい。

 鬼島俊彦(としひこ)は、文藝春秋の社員である理央とは違い、他社の週刊誌から一年ほど前に引き抜かれて移ってきた契約記者だ。これまで、仕事の話はしても個人的に親しく喋ったことはない。名前に似合わず地蔵のような顔をしたずんぐりむっくりの中年男で、時々皆がびっくりするような特ダネを取ってくるのだが、同僚としてはつかみどころがなく、会議の時などやたらとのんびりした物言いを聞いていると苛々させられる。はっきり言って、苦手だった。

 とはいえ冷静に考えれば、取材班は多いに越したことはない。周辺取材はもとより、いざウォッチャー目黒のもとへ直接当て(、、)に行くとなれば人数がものをいう。

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source : 週刊文春 2026年2月12日号