(にしおかとくま/1946年、神奈川県生まれ。玉川大学文学部芸術学科卒業後、劇団文学座に入団。79年退団後、蜷川幸雄やつかこうへい演出の舞台で人気を博しドラマや映画など多方面で活躍。2024年、出演作『SHOGUN 将軍』がエミー賞史上最多の18冠達成。初の自伝は『未完成』。)

 

 1人暮らしを始めた頃、知人のおばさんから「役者を続けたいなら東に引っ越しなさい」と言われたんです。それから自分でも方位学を勉強して「吉方」へ引っ越したのは20回くらい。家族が増えてからの引っ越しは2トントラックで2日がかり。「お化けが出る」と娘たちにダメ出しされて半年で出た家もあったから、俺には吉方でも家族には迷惑だったかもしれないね。

 ハリウッド製作ドラマ『SHOGUN 将軍』の戸田広松役をオーディションで勝ち取り、パソコン執筆に四苦八苦しながら書き上げた初の自伝『未完成』を出版。熟練俳優として多方面で活躍している西岡德馬さんは1946年、神奈川県横浜市中区野毛で生まれた。2年後には弟も誕生。西岡さんが6歳のとき、横浜市港北区綱島に父が建てた一軒家へ移り住んだ。

 家の歴史を思い起こすと、やっぱり小学校から大学まで住んだ横浜、綱島の実家が俺の原点だね。母方の祖父の土地が400坪あって、母は4人姉妹の3番目だから4等分した敷地に建てたモルタル造りの超モダンな家。隣には伯母や叔母たち親戚が住んでいて、いつも誰かが行き来して賑やかだった。

 親父は知人と金融業をやったり、伯父の印刷会社を手伝ったりして羽振りが良かった。ハイカラでキザな遊び人の親父だったけど、すごく器用でね。平屋の家を2階建てに増改築したり、レンガ造りの花壇や犬小屋なんかも自分で作ってた。庭の真ん中には、俺と弟の誕生記念に植えてくれた立派な桜の木があった。

イラストレーション 市川興一/いしいつとむ

 酒飲みだった親父は平日の夜は家にいなかったけど、日曜は一緒に海水浴やスキーに行ったり、猟犬を車に乗せて「おい、猟に行くぞ」と兄弟で山に連れ出されたり。厳しい人で「義を見てせざるは勇なきなり」と言って育てられた。

「もう親を泣かせない」と校長先生と約束して高校を卒業

 小児喘息でよく発作が起きていた俺を、母親は過保護なくらい面倒を見てくれて、親父は「男の子の喘息は親父が死んだら治る」と。実際にそうなったから不思議だよ。その頃から親父は俺の適性を見抜いていたのかもしれない。小1のとき、東宝児童劇団に入るよう薦められて、役を演じたら大人たちによく褒められた。ところが大きな役の映画で発作が起きて、周りに迷惑をかけたくなくて3年で退団したけどね。

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source : 週刊文春 2026年4月9日号