学生の頃、大好きで憧れて勝手に犬のように後をついて回っていた先輩は、すこぶる男を見る目がなかった。私から言わせればまったく釣り合っていない、魅力をとんと理解しかねる相手に振り回されながら「でも好きなんだよなあ」と恥ずかしそうに笑う彼女はやっぱり本当に美しくって、だからずっと悔しかった。私が彼女の恋愛対象であったら、そして彼女が私の恋愛対象であったら、もっと大切にしてあげられたのに、と。『いっそ、恋だったらよかったのに』を読めば読むほど、あの頃を思い出して小さくうめき声が漏れる。恋よりずっと重いこの感情は、されど相手の渇望を満たせるわけでも、心の穴を埋められるわけでもない。

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source : 週刊文春 2026年4月23日号