1本の矢は弱いが、3本束ねれば簡単に折れることはない――。著名な訓話「三本の矢」。毛利元就(もとなり)が、隆元(たかもと)吉川元春(きっかわもとはる)()(ばや)(かわ)(たか)(かげ)に伝えたかった本意とは。

 毛利元就の「三本の矢」は作り話です。おそらく江戸時代に成立したもので、イソップ昔話など世界中に似たような話もあります。では完全にフィクションかと言うと、一応、根拠はある。それが元就が息子たちに宛てた手紙『三子教訓状』です。簡単に言えば、そこに“兄弟仲良くやりなさい”と書いてあるわけです。なぜそんなことを、いい歳をした息子たちに向けて書いたかと言えば、“最近、兄弟仲がギクシャクしている。何かにつけては自分を除け者にして弟たちばかりでよろしくやっているようだ”と、長男の隆元が父に手紙で愚痴ってきたから(笑)。いかにも人間味のあるエピソードですが、実はここにこそ、毛利家がいかにして中国地方の覇者となったのか、その鍵が隠されているのです。

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source : 週刊文春 2026年5月7日・14日号