千鳥の大悟は、神妙な面持ちで語った。

「笑い飯に今の仕事を見られて、『おもしろうないな、大悟。なんであんなことすんの』って言われたら、僕、愕然とすると思うんですよ」

――落ち込みますか。

「うん。誰に言われるより」

 レギュラー番組10本を持つ千鳥は、吉本興業切っての売れっ子コンビだ。今や、ダウンタウンの後継者とさえ言われている。その千鳥にとって、笑い飯は、この世界における「親」であり、「兄弟」だった。そして、ときに「教祖」でもあった。
 

 

 大悟と笑い飯の出会いは、1998年まで遡る。岡山県内の商業高校を卒業した大悟は、芸人を志し、大阪のNSC(吉本の芸人養成所)を受験したものの不合格。高校の先輩の紹介で、大阪・難波を拠点にするインディーズライブの団体に流れ着く。インディーズとは、個人運営に近い小規模団体のことである。事務所に所属していない芸人、あるいは事務所に所属しているが出番が少ない芸人らが集まる場所。言ってみれば、業界の「底」だ。

 そのグループには、20組前後の芸人たちが出入りしていた。そこに笑い飯を結成する以前の哲夫と、西田幸治がいた。哲夫は「スキップ」、西田は「たちくらみ」というコンビをそれぞれ別の人と組んでいた。大悟が思い出す。

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source : 週刊文春 2021年11月18日号