週刊文春 電子版

入滅!? 大仏連|みうらじゅん

人生エロエロ 第461回

みうら じゅん
エンタメ 芸能

 人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。

“ブームは起きるものじゃなくて、起すものなのだ”

 などと、御託を並べるようになった30代半ば(1992年頃)、やたらカーッときていたのである。

 学生時代に作ったオリジナルソングが400曲以上にも及び、友達から「プロより多いんじゃねえの」と、からかわれたこともあったけど、逆にプロじゃないからこそ作れたんだと思う。

 土台無理だけど、売れ筋路線を意識して書く必要なんてないんだから。

 当時はバンド活動も頻繁に行っていたので、その“マイブーム原理”でさらに曲数は増えた。

“暗いお堂にひとり立ち

 極楽浄土のサウンドで

 踊る 観音”

『君は千手観音』と、題したその歌詞は、これから起す仏像ブームのテーマソングにと思い書いた。

 もちろんそんなことは誰からも頼まれちゃいない。

 強いて言えば仏像好きになった小学4年生時の自分。

「おじちゃん、仏像がめちゃカッコイイことをその歌で広めて下さい」

 と、過去から手紙が届いたような気がした。

“千手千眼 戦慄の

 蓮華世界をパノラマで

 映す 観音”

 これに自ら曲を付けるのはいつものこと。しかし僕には作れないもっとハードでパンチ力のある曲がいいと思った。今回は本当のブームを起す気だから。

“念仏行脚の傍らで

 聖衆来迎 ハイウェイ

 飛ばす 観音”

 この詞にめちゃカッコイイ曲を付けられ、しかも演奏出来るバンドは唯一無二の『人間椅子』だ。

 友達だったので早速、ギターの和嶋(慎治)氏に電話を入れ、熱くその旨を伝えた。彼は仏教系大学出身で、卒論のテーマを一遍上人にしたという逸材。「仏像ブーム、来るといいっスね」と言って快諾してくれた。

“COME ON KANNON

 COME ON KANNON

 WOO WOO WOO”

 しばらくして送られてきたデモテープは期待以上の超絶超テクのヘヴィメタルだった。

『君は千手観音』の初披露は当時、デーモン小暮閣下が司会を務めてたバンド番組。ユニット名を『大日本仏像連合』(通称・大仏連)としたが、連合というにはメンバーが少ないし、それに僕のボーカルだけじゃブームに付きものの“キャー!!”要素が乏しい。

 慌てて収録2日前に大槻(ケンヂ)氏に電話を入れた。以来、大槻氏は僕からの誘いを“赤紙”と呼ぶようになった。「ごめん、ここは一丁、仏像ブームを起すためお願いしますよ!」

“金剛力士を従えて

 闇にキラリと玉虫厨子

 観音!”

 勢い付いた僕は金剛力士役にと、かつて怪獣対談で親交を深めた空手家の佐竹雅昭氏も勧誘した。

 その模様は誰かがきっとYouTubeに上げていると思うので確認して欲しい。

 で、結論だけど、大仏連は単なる企画バンドと受け取られ、真の仏像ブームは2009年の『国宝 阿修羅展』まで持ち越されたのだった。
 

 

source : 週刊文春 2021年12月2日号

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