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「笑い神 M-1、その純情と狂気」第12回——朝日放送制作のM-1がゴールデンで戦うには何が必要だったのか。

中村 計
エンタメ 芸能

「こんな言い方したら怒られるかもしれませんが」

 03年から09年までM-1のプロデューサーを務めた朝日放送(ABC)の森本茂樹は、そう前置きしてから言った。

「M-1は日本のテレビで唯一、ガチンコの賞レースをやってんねん、と。そういう自負はありました。昔は、みんな裏がありましたから」

朝日放送(写真 産経新聞)

 体も声も大きな森本は、やや極論に走る傾向があったものの、次々と気持ちのいい「直球」を投げ込んでくる好人物だった。

「東京の悪口を言うわけじゃないけど、東京のテレビマンは数字とることしか考えてないんですよ。いちばん大事なのは、お笑いをどんだけ好きかってことじゃないですか」

 不思議でならないことがあった。今、全国ネットで放送されている大きなお笑いコンテストはM-1以外にも3つある。ピン芸と呼ばれる1人芸限定の『R-1グランプリ』(関西テレビ放送制作、2002年〜)、コント日本一を決める『キングオブコント』(TBSテレビ制作、2008年〜)、女性芸人たちで争われる『THE W』(日本テレビ制作、2017年〜)だ。R-1はともかく、キングオブコントも、THE Wも、東京キー局が手がけている。人員や予算などはM-1よりはるかに潤沢なはずだ。なのに、なぜM-1だけがここまで繁栄したのか。

 いくつかの理由が考えられる。だが、ここ数年、M-1関連の取材を続けていて、決定的な理由がわかった気がする。M-1にあって、他のコンテストに欠けているもの。それは「ABC」だ。

 奈良出身の森本は、慶応大の落語研究会出身だ。就職活動時、「お笑いをやるならABCしかない」と、マスコミ方面は、地元関西のABC1社しか受けなかったという。

「僕の入社は1983年。まだ、漫才ブームの余韻が残ってましたね。その頃から、お笑い番組をいちばん真剣にやっているのはABCだった。だから、僕みたいに東京の大学に行っても、ABCでお笑いがやりたいと言って大阪に戻ってくる人がいるんです。ABCが生み出したお笑い番組っていっぱいあるんですよ」

 古くは、関西で視聴率60%台を記録したお化け番組『てなもんや三度笠』(1962〜68年)がある。森本が、その背景を説明する。

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source : 週刊文春 2022年2月10日号

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